はちみつ色の日々

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「…………そっか、」


「ふっ、そこは詳しく聞いてこねぇのかお前は」


「聞かなくても分かるもん……」





私のその言葉に
一瞬目を開いて驚いたかと思うと
また顔を伏せた。

そこから話す言葉は低音で
まるで独り言のように。




「今さ、すげぇ何もやる気起きねぇの。
子供らいるし、教室はかろうじてやれてるけど
誰もいなくなると空虚感っつーか、
生きてる意味すら分かんなくなる」


「そんな……っ、！」




"生きてる意味"なんて言わないで欲しい。

ひろがそこにいるだけで私には
"生きてる意味"なのに。





「……ちょっとさ、名前呼んでくんね？」


「え？」


「俺の名前」




ついにはテーブルに腕を乗せてその上に突っ伏してしまって
私を見上げるように、名前を呼ぶことをねだってきた。





「ひ、ひろ………？」


「うん、」


「ひろ………、ひろ？」


「…………ん、」





目を瞑って、噛み締めるように聞く姿勢で
直感で分かってしまった。

あ、その大事な人にも
"ひろ"って呼ばれてたんだなって。





「私、今でもひろのことが好きだよ…？」


「…………、」


「私がそばにいるだけで
ちょっとでも救いにならないかな？」




今またこうやって出会えたのも
運命な気すらしてくる。

大事な人を失ったひろに
私がまた出会えたのは、きっと意味があるんじゃないかって。





.






「っ、ひろ……」


「A………、」


「ひろ……っ、すき……、だいすき……っ」





ずっと好きだったひろと身体を重ねてしまった。

望んでたはずなのに
私の名前を呼んでくれてるはずなのに

私を見る瞳が
私を見ているようで、何も写してないから
それから目を背けるように
大きな背中に手を回して抱き着いた。

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