泣き顔マニア

４７ ページ47

.

私と行きたいんだもん、なんて
気のない女に言うセリフじゃないでしょ……。




「ばか、無神経」


「はぁ〜？」


「遥さんが悲しむでしょっ」




私が悲しんだって裕太にはきっと響かないし
遥さんが悲しむならきっと裕太はなんだって出来るんだと思う。




「……そっか、じゃあチャーハンはお預けだな」


「だからー！
なんで遥さんだとチャーハン連れて行けないのよっ」


「だって遥さんはもっと違うのが良くない？」


「………知らないけど、」




でも確かにランチで連れてってもらったとこも
見たことないような名前のオシャレなパスタのお店だった……、
ってことは裕太には言わないでおこ。

何が好きなんだろ〜、って携帯ポチポチしてる裕太の横で
さっきの遥さんの言葉を思い出していた。



"裕太くんのことを好きかは分からないけど"

って。

正直そんな気持ちで裕太と付き合わないでよって気持ちもなくはないけど、
私が言ったところでどうにもならないし。




現に今
目の前で幸せそうな裕太がいるんだし…………、ね。






.






＊＊＊＊＊



「あ〜っ、お腹すいたっ」




気付けば定時はとっくに過ぎていて
社内は私ひとりだけ。

外は真っ暗だし、お腹はすいたし………って
色々考えすぎて仕事が手につかなかった私の、自業自得だけど。





「ラーメン食べたくなってきちゃったぁ……」




結局裕太とのラーメン屋さんは断ったけど
今頃なにしてんだろう。

遥さんとオシャレなとこでデートでもしてるのかな………、


「っくく、」

「え？」





その時後ろから声が聞こえてきて振り返ると
入口のとこで立ってる北山先輩が見えた。





「わっ、北山先輩？！」


「お前、ひとりごと多すぎだろ」




おかしいやつだな〜、って笑いながら
こっちに歩いてくるから、どんどん鮮明に見えてくるそのお顔。




「やだ…、いつからいたんですか」


「ラーメン食べたくなってきちゃった、あたりから」


「めちゃくちゃ最初から………」


「んっはは、笑い堪えんの大変だったわ」


「もうっ、声掛けてくださいよっ」




よりによってラーメン食べたいだなんてひとりごと……、
大笑いしてる先輩に
恥ずかしくて恥ずかしくて、ぷいってしてパソコンへと視線を戻した。

４８→←４６ 玉森side

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す