泣き顔マニア

２３ ページ23

.


先輩に教えて貰ってた部屋番号のインターホンを鳴らすと
すぐに出てきてくれた遥さん。




「え、裕太くんとAちゃん
どうしたの？」




目を丸くしてる遥さんは思ったよりも元気そうで
いつもみたいにキッチリしてるわけではない
緩くて少し隙がある格好。

思わず隣の裕太をチラ見すると
案の定顔が緩んでる。





「急にごめんなさい、
体調不良でお休みって聞いて、あの……
北山先輩に住所を聞いて」


「宏光から…」




多分、その名前を出したことで全部察したんだと思う。

入って？って促された部屋に入ると
想像通りな綺麗な部屋と、いい香り。





「遥さんのお口に合うか分かんないんですけど
幅広いジャンルで色々買ってきたので
良かったらどうぞ」


「わ、ありがとう。
ごめんね、気使わせちゃって」


「いえいえ…………ってほら、裕太」





ここまでずっと無言だった裕太。

手に持ってる差し入れを渡すこともなく突っ立ってるから
肩をぶつけると、ハッとしたようにようやく口を開いた。





「あっ、これ差し入れですっ」


「ありがとうね〜すごい！こんなに沢山」


「体調大丈夫ですか？
何も食べてないとダメだと思って、プリンとかなら食べやすいかなって」


「う………ん、体調は大丈夫」





目を伏せて悲しげに笑う遥さんは
儚くて今にも消えそうだった。

女の私から見ても、守らないとって思ってしまうほど。





「宏光から……聞いたんだよね？
後輩使って様子見に来てもらうなんて、ごめんね迷惑かけちゃって」


「そんなんじゃないっすよ！
本当にただ心配でっ」


「………優しいね、裕太くんは」






ずっと疑問に思ってたけど
遥さんは裕太の気持ちに気付いているんだろうか。

ここまで分かりやすかったら気付いてないはずはないと思うけど
裕太に対する下心は見えたことがないから
どこかで安心してたのかもしれない。

２４→←２２

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す