泣き顔マニア

２２ ページ22

.


「ねぇ裕太、買いすぎじゃない？」


「だって何がいいのか分かんないんだもん」





会社を定時で終えると
誰よりも早く会社を出る裕太に引っ張られるようにやってきたコンビニ。

スイーツからジュースからお弁当まで
幅広くカゴに入れていくもんだから
コンビニでの買い物とは思えないくらい、パンパン。




「こんなに差し入れされても逆に困るって」


「でもさ、このプリンは前に休憩中に食べてたし
ハンバーグはよく社食で食べてるのね？
そんでこの、

「分ーかったから！
でもとりあえず減らそ？せめて半分にしよう」


「え〜」


「ほら早く、遅くなっちゃうよ」


「仕方ないなぁ」




渋々カゴの中身をガサゴソして
また悩みながら戻していってる。

好きなプリンとか、社食でいつも食べてるメニューとか
よく見てるんだなぁ……。

分かってはいたけど
こういうのを実感する度に胸が痛くなる。






「よし、じゃあ行きますか！」


「……それ、減らしたの？」


「減らしたよ、もうこれ以上は無理」


「まぁ裕太がいいならいいけど……」




私に今朝くれたもの達より明らかに多いその品数からも
気持ちの違いを表されてるみたいで
また心が痛かった。

その痛みを悟られないように
先輩からの住所をもとに遥さんの家へと急ぐ。






「ここかな？」




もう日が沈みそうな時間。

ようやく着いたそこは
綺麗な白色のマンションだった。





「やば、緊張してきた」


「じゃあやっぱ止めとく？」


「なんでだよ、行くよっ」


「ふふ、じゃあ行こっ」




なーんて、私だって緊張してるのに。

パチッと頬を叩いて気合を入れてる裕太の横で
私も深呼吸をして気合いを入れる。





どうか少しでも
遥さんに、裕太のいいところが伝わりませんように……。

２３→←２１ 北山side

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す