泣き顔マニア

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「…………はい、」


「あ、A？今どこいんの？」





電話に出ると、先輩の声とその周りからは少し騒がしい音が聞こえる。

今日は遥さんと話をする日なんじゃ……、と思ったけど
泣いてるの声を悟られるのも怖くて、大人しく先輩の質問に答えた。





「会社の近くの駅ですけど」


「お、まじ？
俺も今駅にいんだけどさ、ちょっと会えない？」


「え？」


「じゃ、待ってっから」


「ちょっ、━━━━、




……………切れた。

私の返事も待たずに一方的に決められた。


全然いまは先輩と会う気分でもないのに
むしろもう一人で一刻も家に帰って引きこもりたい。

でも駅に行かないと家には帰れないし……。




はぁ…………、と小さくため息をついて
近くのコンビニのトイレで、涙で崩れた化粧を少しだけ整えた。

泣いていたのが先輩にバレないように。






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「先輩、お疲れ様ですっ」




それからすぐに駅に行くと
携帯片手に待っていてくれて、




「………なんかあった？」




私の顔を見るなり
ここが駅だというのを忘れてるのかってくらい近付かれて、顔を覗き込まれた。





「えっ、な、なにもないですっ」


「そう？
なんか元気なくね？」


「ちょっと……、仕事が忙しかったから……？」


「……ふーん。」





普段は鈍感な印象がある先輩なのに
こういうのにはすぐ気づいちゃうとこ。

裕太は絶対気付かないタイプだから
こういう反応をされたら、どうしたらいいか分かんない。





「あ、あのっ、それよりどうしたんですか？
今日は遥さんと話すって」


「うん、だから今から帰って話す」


「え？じゃあなんで私を……？」




これから帰るのにわざわざ私を呼び出したの……？

先輩の言ってることがよく分かんなくて
きっと分かりやすく私の頭の上は、ハテナマークでいっぱいだったと思う。

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