泣き顔マニア

１１ ページ11

.


「ていうか、Aはどうなの？」


「え？」






わたし？と、口に頬張ったラーメンを飲み込んで
顔を上げた。






「北山先輩、Aのこと好きって言ってたじゃん」


「あぁ……、」





珍しい。
遥先輩だけのことじゃなく
私の事まで気にしてくれるなんて。

珍しすぎてろくな反応も出来ずにいる私を横目に
パクパクとチャーハンが口に運ばれていってる。





「だって私はそんなこと言われたって
北山先輩のことは好きじゃないし……、」


「そうなの？」


「そうなの？って……、」






まるで他人事、みたいな顔。

私の好きな人は
今目の前で呑気にチャーハンを頬張ってるあなたなのに
分かってるはずなのに、なんだそのキョトン顔。







「………分かってるでしょ、私の気持ち」


「はて？おれ？」


「そうだよ、裕太！」






思わずそう言ってしまうと
丸い目を更に丸くさせた。







「え、まだ俺のこと好きだったの？」


「…………へ？」







今度はきっと私が目を丸くしてると思う。

"まだ好きだったの？"とは………？







「ん〜そっか、そうだったんだ。
いや〜でも俺遥先輩好きだしなぁ」


「それは知ってるし何回も聞いてる……」


「いっそ北山先輩のとこ行ったら？
意外に上手くいきそう、ていうかお似合いだよ」


「……………は？」








裕太が悪気がないのは分かってる。

分かってるけどさすがにこれは
私の中の何かがプッチンした。

手にしてたレンゲをお皿に置いて
目の前の裕太の手に持たれてるレンゲも奪い取り、立ち上がってしまったのだ。




「あ、ちょっと何す、

「じゃあ裕太はどうなわけ？」







カラン……、と奪ったレンゲがテーブルに転がった。

立ち上がって声を荒らげた私に
周りの視線が集まった気がしたけど
正直今はそんなのどうでもいい。

１２→←１０

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す