甘く、苦く、こい。

８ ページ8

.


「凄くいいとこ住んでるんだね〜」


「え？そうっすか？」





仕事が終わって二人で買い出しをして
北山くんのお家にお邪魔した。

私の部屋よりも全然広いし
あんまり物もないし、男の人の部屋って感じ。





「で？何作ってくれんの？」




買い出しの時に手料理の約束をして
挽き肉と玉ねぎと〜、って材料を一緒に買ったにも関わらず
全然ピンと来てないあたり、可愛い。





「ハンバーグは好き？」


「ハンバーグ！めっちゃ好き！」


「ふふ、良かった〜正解はハンバーグでーす」






買ってきたものをキッチンに並べながら
目を輝かせてる北山くん。

こうやって誰かに手料理を作ることじたい久しぶりだけど
ここまで期待に満ち溢れて喜んでくれると
作りがいがあるな〜。





「煮込みハンバーグがいい〜」


「煮込みかぁ、出来るかなぁ」


「出来る出来る、Aさんなら出来る」


「もう、適当なんだから」





玉ねぎを手にしながら楽しそうな北山くんに
隣を見上げて肩をぶつけると
いひひ、っていたずらっ子みたいな笑顔を覗かせた。






「北山くんって、後輩を演じるのうまいよね」


「え〜？演じてるつもりないっすけど〜」


「でも素のときとか、真剣な時とかすごく色気出てるのに
話すと凄く後輩感出してくるんだもん」





本当の彼はどっちなのかな？って混乱しちゃうほど
たまに見せるそういう雰囲気がある。

周りの女の子たちもそれに
気付いてるのか気付いてないのか分かんないけど
そこは少なからず、彼がモテる理由の一つでもあると思う。






「色気〜？ないない」


「あるよ〜、割といつも半開きの唇とかさ」


「……ディスってんでしょ、それ」


「ふふ、違うよ」






むっ、て可愛く睨みつけるように怒るとことか
あざとい後輩感。

もしこれがわざとじゃなかったとしたら
もの凄く人に好かれる天性だなぁって思う。

９→←７ 北山side

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す