甘く、苦く、こい。

７ 北山side ページ7

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「そんなことより、あれから無事に家に帰れました？」


「うん、ていうかほぼ北山くんが家の前まで送ってくれたじゃない」


「そうだけど、メールの返事もなかったし」


「あ、そうだ！忘れてた！」





ごめんね〜ってニコニコしてるけど
結局こんなもんなんだよな、都合のいい男なんて。

メールの返事も忘れるくらいの存在ってことだよな。





「今日、仕事終わったら空いてます？」





それでも食らいつきたいくらいにはもうAさんが気になってるし
小声でそう声をかければ、目を丸くしてから嬉しそうに頬を緩ませた。






「会いたい？」


「そりゃそうだから声掛けたんだけど」


「会って何するの？」


「なにって………、」





なにをしたいか、だなんて
こんな朝っぱらから会社のエレベーターの前で言えることじゃねぇのに。

言葉に詰まる俺に擦り寄るようにさり気なく近付いてくるAさんから
ふわっと甘い香りがする。





「私も、また北山くんとしたいな」




上目遣いは偶然なのか、策略なのか。




「………俺も。」




会いたい、じゃなくて
したい、ってとこがまた変な関係。






「じゃあ仕事終わってから、私の家にする？
それとも北山くんの家？」


「んー、俺はどっちでも」


「………北山くん家に行ってもいいんだ」


「え？別にいいけど？」





どうしてそこを疑問に思ったのか分かんないけど
キョトンとしてる俺に、北山くんの家に行きたいって言うから
とりあえずそれで約束を取り付けた。






「なんか映画とか借りていきます？」


「あ、いいね〜。
北山くんどんなの見るの？」


「割となんでも見るかな〜
ホラー系とかもいけるし」


「私もホラー系いけるよ」


「へぇ、怖いの苦手そうなのに」


「そうなんだよね〜可愛げなく普通に見れちゃうの」




そんな話をしながら再び来たエレベーターに乗り込んで
扉が閉まった瞬間に、





「可愛げならあるよ、Aさんは」





って、一瞬触れるだけのキスをした。





「ふふ、ダメだよ会社だよここ」


「だって今二人きりだし〜」





ダメとか言ってるけど嬉しそうなその顔に
俺もまた脳内花畑みたいに浮かれてた。

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