甘く、苦く、こい。

４５ 北山side ページ45

━━それから1ヶ月くらい。





「えっ、Aさん結婚するんですか？！」


「うん、ごめんね急に」


「しかもまさかの北山さんと〜？！
いや〜っ！！」


「おい、なんだよ嫌って」





やっと周りに報告してくれる気になったAが朝一で皆にそう言い回ってると
一番Aを慕ってた後輩が怪訝な顔で俺を見てくる。





「だって……、大丈夫です？」


「大丈夫だわ、むしろ大丈夫な気しかしねぇわ」


「…………、」





この後輩は俺にどんなイメージ持ってんだ。

相変わらず疑いの目を向けてくる後輩に
Aが堪えきれなかったように笑いだした。





「ふふっ、大丈夫だよ。
心配ありがとうね？
仕事も落ち着いたら辞めちゃうけど……、頑張ってね」


「やです〜、寂しいです〜っ！！」





そう。
あれから色々と話し合って、Aは仕事も辞めることにした。

結婚して同じ職場にいるって訳にもいかないし
とりあえずは少し落ち着くまで、俺の奥さんを満喫してもらって〜………、って
完全に俺の願望だったけど
Aはあっさり承諾してくれた。





「そんな事言わないで。
北山くんの見張り、頼んだよっ」


「見張りですか？」


「そう、可愛い子とか来たらすぐデレデレするから」


「しねぇから！」






食い気味でそう突っ込むとまたクスクス笑ってて
やべぇ幸せ……って思っちゃう。

無理やり仕事を奪うつもりはなかったけど
ちゃんと俺のそばにいたい、って気持ちで決断したことが伝わってくるから。






.







＊＊＊＊＊＊＊


「あーあ、なんか今日一日だけでかなり皆にディスられた気する」





仕事が終わって俺ん家に来てくれるA。

来月にはもう同棲の部屋に移るから
ちらほらと荷物もまとめ始めてる。





「みんな宏光のこと慕ってるからそういうのも言えるんだよ」


「それにしたってさ〜」






Aを嫁に貰うなんてお前何様だ！とか
散々に言われまくったんだもん。

確かにそれは自分でもそう思うけど
部屋着にいつの間にか着替えてたAにさり気なく近付いて
ぐったりした気持ちを癒されるように
後ろからぎゅっとハグをした。

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