甘く、苦く、こい。

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残業を終えて会社を出ると
先に帰ったはずだった北山くんが息を切らしながらやってきた。






「じゃあ何……？」





ココ最近まともに話してなかったから
この至近距離に、柄にもなくドキドキしてる。






「さっき、聞いて………っ」


「聞いて……？」


「あれだよ、あれ！あいつ！」


「あいつ………？」





息を切らしてるからか、話すことがまとまってないからか
断片的な言葉しか出てこない彼に何を言いたいのかさっぱり分からない。






「社長の息子だよっ、横尾」


「…………あぁ、」





その言葉に全部バレちゃったのかなって思った。

別に内緒にするつもりはなかったけど
わざわざ言う必要もないかなって思ってたけど……。






「なんで？付き合うっつってたじゃん」


「うん………、
ねぇとりあえず場所移動しない？」






ここは会社の真ん前。

定時を過ぎてるから人が少ないとはいえ
こんな話をここでする勇気もなくて。

確かにそうだな、って納得した宏光は
私の少し先を歩くように方向転換をして歩き始めた。





その後ろをついて歩きながら
ちょっとだけ懐かしい気持ちになる。

つい最近まではいつもこうして一緒にいて
抱き合ってたんだなぁって
その背中に今すぐ抱きつきたくなるほど、胸がギュッとした。






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「………………で、なんでラブホ？」




北山くんに着いてくると
なぜか可愛らしいラブホテル。

スタスタと中に入ってベットに腰を下ろすと
早く来なよ、って手招きされるから
戸惑いながらも私も部屋に足を踏み入れた。





「ゆっくり話すならここがいいんでしょ？」


「………そうだけど、」





まるであの日の仕返しみたいに意地悪にそう言うから
それに負けないように私も平然を装って隣に座る。

このホテル独特な香りと北山くんの匂いが混じると
それだけで変な気分になるから不思議。

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