甘く、苦く、こい。

３２ 北山side ページ32

.


あれから一週間。

特にAと話すこともなく過ぎる日々。





「北山先輩、コピー終わりましたっ」


「お、サンキュー」





あの夜は結局田部ちゃんとどうこうなることもなかったし、


というか、なることも出来なかったっつーか。






━━━━━、


「………やっぱごめん。
田部ちゃんを利用するようなこと出来ねぇわ」


「そんなっ、私は全然いいんです！」


「ダメだよ、俺田部ちゃんのことは後輩として大好きだからさ」



そんなやり取りがあってすげぇ泣かれたけど
しかもラブホで(しかも俺も俺でよく我慢出来たもんだ)






.







「先輩、私昨日告白されたんです」




コピーを頼んだ資料を渡される時に
コソッと伝えられたその言葉。




「へ？誰に？」


「玉森先輩に！
もう〜私前から北山先輩の次にいいなって思ってたから嬉しくって！」


「…………へぇ、」




なんだなんだ、この複雑な気持ちは。




「ってことで、北山先輩も頑張ってくださいね」




すげぇ振られた気分の俺を取り残して
周りにハッピーオーラを撒き散らしながらデスクに戻ってく。





「頑張ってください、か………。」





何をどう頑張れっつーだよな、この状況で。

ふとAに目線をやれば普通に仕事をしてて
自然にため息が零れる。

割と今まで、見た目に反して男らしいって言われてきたけど
全然じゃん。

めちゃくちゃ女々しいじゃん。






.






＊＊＊＊＊


「あ、」


「あ、こんばんは」





その日の帰り、駅に着くと見覚えのある顔が。

軽く会釈をすると、にこっと笑顔を見せながら近寄ってきた。





「お疲れ様です」


「お疲れ様。北山くん、だよね？」





相変わらずスラッとしてて
スーツがまた良く似合う、横尾 渉。





「そうです、覚えてくれてて嬉しいっす。
あれっすか？Aさんに会いに来たんすか？」


「いや、ちょっと用事があって来ただけなんだけど………。
ていうか、聞いてない？」


「え？」





髪の毛を弄りながら
少し気まずそうにするその姿。

３３ 北山side→←３１

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す