甘く、苦く、こい。

２６ ページ26

.


二人で話す時はいつも甘い声で
それだけでキュンとしてたのに、今は違う。

軽蔑……されたってしょうがないもんなぁ…。





「別にね、今すぐ結婚とかってわけじゃないんだけど」


「でも付き合うの？」


「……………うん、」





そっか、って一瞬だけ悲しそうな顔をした宏光にまた無駄な言い訳をしようかと思ったけど
そんなことしたってなんの意味も持たないなって気付いてすぐにやめた。

都合のいい関係ならそれに相応しく
最後まで貫き通さないと。





「もう、会えない？会いたくない？」


「別にAが必要とすんだったら抱くけど」


「………、」




なんだか宏光の圧に圧倒されて
いつもとは違う、まるで私が抱いて欲しくて懇願してるみたいな。




「あいつじゃ満足出来なそうだから
俺のことキープしとく？」


「キープって言い方……」


「だってそうじゃん。
おれ以上にあいつがAのこと満足させてあげられるとは到底思えねんだけど」





……それは確かにそう思うけど。

キスをしただけで分かった、
宏光みたいな何かを感じることもないし
刺激を求めるには、彼は違うということ。

それも全部お見通しかのように言い放つと
たまたますぐ後ろにあった会議室の扉を開けて
吸い込まれるように、その部屋に押し込まれた。





「え………？」





パタン、と閉まる扉と同時に壁に押し付けられて
状況を理解する間もなく唇を奪われた。

少し荒々しくて熱くて
離された唇を見つめる視線が、色っぽい。






「…………したい、」







そう一言呟くとまた唇を塞ぎながら
スカートを捲り上げるように太ももを撫でられる。






「ちょっ、待って、ここで？」


「こんな朝から誰も来ないよ、こんなとこ」


「でも……っ」


「したい時にするのが俺らの関係なんでしょ？」







どうしてなのかな。

なんでこんなに苦しくなるんだろう、
好きとか嫌いとか、
付き合うとか付き合わないとか、
そういうのなしにして、ずっと宏光と触れ合っていたいのに。

彼の苦しそうな表情を見ていると
どうしようもなく、ずっとずっとそばにいてあげたくなる。

２７→←２５ 北山side

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す