ころころ愛ごころ

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「ミツ、新作どうぞっ！」


「ううわ…、くっそ甘そう……」





その日の夜の閉店間際、
いつもの様に店に晩御飯を食べに来たミツ。

あの酔っ払って私を悩ませたあの日の記憶は曖昧らしく
私も深く掘り返さずに、いつものように接していた。





「うん、甘いけどおいしいよ」


「甘いのか〜俺いま全然甘いものの気分じゃねんだけど」


「じゃあ一口だけでも食べてみない？
すっっごいおいしいから！」





この美味しさを純粋に味わって欲しくて
テーブルに身を乗り出して力説してると
じっ、となぜか私を見つめはじめた。





「……え、な、なに？」




自分から身を乗り出しといたくせに
その視線に捕らわれると、一気にビクビクしちゃうんだけど。





「じゃあ、食わして」


「へ？」


「この生クリーム少ないとこ、食わして」




ん、ってその箇所を指さされて
呆然と立ってる私の手に無理やりフォークを握らせてくる。





「はっ、な、なんで私が食べさせないとっ、」


「じゃあいいもーん。
食わないもーん。」





唇を尖らして可愛くそう言ってるけど
別に食べないなら食べないでいいんだけどね？

そんな辱めを受けてまで
ミツに食べてもらいたいわけでもないしね？





「じゃあこっちだっていいもん。
食べなくていいよーだっ」





私が食べるからね、って
握らされたフォークと一緒にスイーツのお皿も持ち上げて
見せつけるようにいっちばんクリームが多いとこをすくい上げて口に放り込んだ。





「おーいひーっ」


「ほー、確かに美味そうだな」




今更そんなこと言ったってあげないんだから、と
お皿をミツから遠ざけるようにぷいってすると
不意に立ち上がったミツが、私の唇に触れた。






「……………ん？」





正確にいえば
唇の端に触れた、なんだけど
その指をペロって舐めて、あまっ！て顔をしかめてる。

そこでようやく気がついた、
ミツが私の唇についたクリームを舐めたってことに。

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