ころころ愛ごころ

１６ 藤ヶ谷side ページ16

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「北山と……？」





仕事が終わって携帯をチェックすると

"Aが俺らと飲みたいっていうから
うちに一緒いる、先飲んでる"

ってメールが。





「どした？」


「あぁ、うん。
Aが北山と飲んでるって」


「へぇ〜、ていうかあの子なんなの？」


「北山が連れてきた子。
なんか色々訳ありらしくて、色々勝手にここで働くのとか決めちゃってごめんね」


「いや、別にそれはいいんだけどさ」






渉が言おうとしてることは分かる。

急に見ず知らずの女の子を連れてきて
しかも北山が連れてきた子で。

そんな子に、あれやこれやと柄にもなく世話してるわけだもんな。





「まぁまぁ、渉に迷惑はかけないからさ」


「どうだかなぁ〜」





俺も帰ろっと、ってエプロンを外してる横で
俺も急いで着替えて帰り支度をした。

渉はやたらと帰り支度が早いから
いくら俺のが早く上がっても結局一緒に出ることになるんだよな。






「太輔もそこに合流すんの？」


「うん、Aの部屋まだなんもないし
うちに泊めてあげようと思ってたからさ」


「……それって警戒されてんじゃないの？」


「え？」





店のセキュリティをかけながらそう言う渉に
思わず足を止めてしまった。






「みっちゃんと先に飲んでて
太輔とふたりっきりにならないように警戒してる、みたいな？」


「………そうなのかな、」


「あるいは、みっちゃんが太輔とあの子をふたりっきりにしたくなくて
飲みに誘ったか」





……いや、それはないな。

北山は俺に対してそういうことを出来るやつじゃない。

となると、やっぱAに警戒されてんのか。






「なんか久しぶりにワクワクするな〜」


「出た、太輔の悪いとこ」


「あ、ひどっ」


「自分になびかない子メロメロにするの好きだよね〜悪趣味〜」


「でもなかなか一筋縄じゃいかなそうな子なんだよね〜」





なんてったって"不感症"ってんだから。

そんな子を少しずつ俺が感じさせてあげられたらって思うと
単純な"好き"とか"嫌い"とかじゃなく
もっとなにか別にステージに行けそうな気がして。






「ほどほどにね」





そんな俺の思考をお見通しかのような渉に別れを告げて
寒空の下、自分のマンションへと向かった。

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