ころころ愛ごころ

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「課長、お酒おつぎしますよ。
あ、主任もサラダ取り分けましょうか？」

「いいね〜
君みたいな子が嫁だったら毎日お盛んだな〜」





誰も望んでない飲み会というこの場。




「またあの子上司に媚び売ってるし」




丸聞こえな悪口。






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「っだぁぁぁーーーっ！！もうっ！！」





こっちだって媚び売りたくて売ってるわけじゃないし！
あんた達が上司に酒もつがずにいるから
私が行くしかないんでしょうが！！




………って、
言えたらどんなに楽になるか。

現実は誰もいないお手洗いで
控えめな雄叫びを上げて、ベタベタ上司に触られた手をひたすらに洗うことしか出来ない。


ふと顔を上げて鏡に映る自分にため息が出る。






こんな自分、大嫌いだ。







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「ふふ、ねぇダメだって〜」


「いいじゃん、こんなとこ誰も来ないよ」





とりあえず気持ちを落ち着かせて
お手洗いから戻ろうとすると
ヒソヒソ聞こえるそんな声。

少し横に逸れた視角スペース。

聞き慣れた声に思わず足を止めてしまい
来た道を戻ってそこを覗き込んでしまった…………、



のが、間違いだったのかもしれない。







「……………けいすけ……？」


「っ？！Aっ、？！」





同僚の彼氏であるけいすけが
後輩とイチャついてるその姿。





「……………っ、」


「Aっ！」





思わずその場を後退り
けいすけの声を背に、そのまま飲み会の席に戻ると
荷物を手に店を飛び出した。






最悪、最悪、最悪。





どれくらい走ったのか
気付けばもう息が苦しいほど走っていたみたいで
その場にしゃがみ込んだ。

その瞬間に地面に水滴が染み込んで
そこで初めて自分が泣いてることに気づいた。



ああ、だからこんなにも息苦しかったんだ。




もう何もかも捨てたい。



上司に媚びを売るのも
女性社員からの悪口を聞こえないふりをするのも
仕事も彼氏も何もかも。

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