HONEY LOVE ４

＊ ページ10

.



そこから接客をこなして閉店も近づいた頃
お客さんは北山さん達と、タチの悪い三人組だけになっていて
少しだけ賑やかさがおさまっていた店内。







「すいませーん、
トイレ詰まってるんですけど〜」







その時トイレから聞こえてきた声。
たまたまトイレ近くにいた私は
なんの躊躇もなく男子トイレの扉を開けた。





…………瞬間に、

ぐいっと腕を強く引かれてあっという間に男子トイレの中。
引かれた腕はそのままに壁へと押し付けられていた。









「えっ？！」








訳も分からぬまま目の前を見上げると
さっきのタチの悪い男たちのひとり、私の体をベタベタ触っていた男が見下ろすように不敵に笑った。









「警戒心ないなぁ」


「はっ？！」








相当酔ってる。目が完全にいってる。

その視線に、触れられてる手に
恐怖心しか感じなくて腕を振りほどこうとするのに適わなくて
声を出そうした途端に、片方の手で口を塞がれた。









「……………っ、！！」


「大人しくしててよ」









お尻あたりを撫でられて、荒い息が首元に近付くから
どうすることも出来なくて、ギュッと目を瞑った瞬間だった━━━━。









.









「なにしてんの？」









ドアが開いて聞こえてきた低い声。

それに少し緩んだ男の力、私は目を開けた。









「……お前、なんだよ」


「それはこっちのセリフだけど」









怯んでるっぽい男に詰め寄った北山さんは
強く私を引き寄せて、胸の中に閉じ込めた。

その胸の中が温かくて
あ、助かったんだ……、ってそこで初めて理解出来た。









「ちょっとからかっただけじゃん」


「こんなに震えてんのに？
通報したら警察沙汰だよ？」


「……………っ、」


「Aちゃん、警察呼ぶ？」








男に対する言葉遣いとは裏腹に
優しく私に問いかけてくれる北山さん。

それでも咄嗟にあまり大事にはしたくないと思ってしまって
ふるふると小さく首を横に振った。








「…………そっか、まじで次はねぇから」








舌打ちと共に出ていった男に
一気に体の力が抜けたのが分かった。

でもそれを支えてくれた北山さんに
私は必死でしがみついていた。

＊→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す