恋愛注意報

２９ ページ29

.



「あ？」






ひーーー！！

だ、大丈夫なの？！
北山くんよりおっきいし、後ろ姿から刈り上げとか見えたりしていかつそうだし
ハラハラしてる間にも、その人はこちらを振り返った。








「あれ？」

「おおっ！！」







険しい顔をしてたその人は
北山くんの顔を見た瞬間に、めちゃくちゃ可愛い笑顔を覗かせた。







「ミツ！何してんの？！」


「いや、それこっちのセリフだしっ！」







久しぶりだなー、って途端にキャッキャとはしゃぎ出した二人。

その隙を見てそろーっと抜けた女の子を
慌ててこっちの方へと呼び寄せた。








.









「ねぇ北山くん、知り合い？」







戸惑ってるその子が私の後ろに隠れたのを確認してから
そう声をかけた。








「そう。二階堂、中学ん時の同級生でさ」


「いやー、まさかミツがバイトしてるなんて」


「お前こそ、そのいかつい風貌でよく接客できてんな」


「あ、ひでえっ！」







あまりにも楽しそうで嬉しそうな二人に
思わず後ろに隠れた子と、顔を見合わせ苦笑い。








「あ、ごめんな？
こいつこう見えて良い奴だし、ちょっと人との距離の詰め方下手くそっつーか。
ナンパとかじゃなくて、ただ交流として仲良くなりたかっただけだと思うから許してやってよ」









思い出したかのように私の後ろを覗き込んで
子供に話しかけるみたいに話すその声。

な？って、最後に笑顔を見せた北山くんに
その女の子のハートにサクッと矢が刺さった音が聞こえた。









「……はい、///」


「ん、良かった。
ほら、二階堂許してくれるってさ」


「だって俺別にナンパしてたわけじゃねぇよぉ…」


「あんなんしてたら、誤解されるわ」








また仲良さそうに話し出しちゃった二人をよそに
私からもなぜか、ごめんねって謝ると
いえいえ！ってほんのり赤い頬で。







「…あの、あの人なんてお名前ですか…？」


「え？北山くんのこと？」


「北山…さん、っていうんですね…」







ポーっと見とれたまま軽く私にお辞儀をすると
その女の子はホテルの方へと行ってしまった。







「・・・」







私、あんなに露骨に人が恋に落ちる瞬間を
初めて見たかもしれない。

３０→←２８

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す