恋愛注意報

１８ ページ18

.



「奥さん……、ていうか元嫁とはニューヨークで出会ったんだけどね。
お互いに慣れない土地でたまたま同じマンションに住んでた日本人ってこともあって
仲良くなるのに時間はかからなかったんだ」






静かな空間に先輩の声だけが聞こえてきて
私は夜景から目を逸らさずに、その声に耳を傾けていた。








「そこからお互いに好きって思えてきて付き合って
トントン拍子に結婚までしたんだ。
……うん、結婚したってとこまではうまくいってたと思うんだよね」


「結婚生活がうまくいかなかったんですか…？」


「……そうだね。
お互いやっぱり慣れてくると仕事優先で会えなかったり
一緒に住んでると色んなとこも見えてきて嫌になったり。
そういうのを乗り越えるのが夫婦なのに
俺らは乗り越えられなかった。」


「・・・」


「Aは俺の事昔からかっこいいって言ってくれてたけど
俺は女ひとりも幸せに出来ないような男なんだよ」







自嘲めいたように笑う先輩に
今まで黙って話を聞いてたけど、耐えられなくなって思わず立ち上がった。








.








「そんな無理して笑うことないですよ」


「え？」








目の前に立ちはだかって
ムギュって隣の先輩の頬を両手で潰すと
冷たい頬が私の手のひらに触れた。









「それに、先輩は充分に幸せにしてます！
私、いまこうして夜景見れてめちゃくちゃ幸せホルモン出ましたよ？
高校時代だって、嫌な図書委員の活動も先輩のお陰で幸せな活動だった」









なんとなく、毎日なんとなく過ごしてた高校生活だったけど
先輩と話せる図書委員の活動が楽しくて、その日を楽しみにしてた。









「先輩の奥さんだって絶対に幸せだったはずです。
幸せを感じられたから、先輩からたくさんの幸せを貰えたから結婚したんじゃないんですか？
ちょっとすれ違っちゃっただけで、先輩は幸せに出来ない男なんかじゃない！」









みんなきっと誰かを幸せにする力を持ってるし
先輩から幸せを貰ったこと、奥さんを少しでも幸せにしてあげてたこと。

そこはちゃんと分かっててほしかった。

１９→←１７

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す