欲しい愛と、知らない恋 ３

１０４ 北山side ページ6

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「じゃあ、またね」


「おう、気ぃつけてな」








タクシーの前で支えてた体を離すと
ギュっ、と上着の裾を掴まれて、上目に見つめられた。

月明かりとわずかな街灯だけが照らす夜道。

それでもはっきりと、彩月の切ない顔が見えた。









「……さっきの言葉、嘘じゃないからね…？」









”すき”って涙ながらに何度も言われた言葉。

嘘だなんて思わないし
嘘として軽く流そうとも思ってない。







・・・けど、









「……うん、分かってんよ」


「考えておいてね？」









俺らが”付き合う”ということ。

彩月の気持ちを受け入れること。

心になにか引っかかってるみたいに
うまく考えることが出来ない。









「…わかった。」


「じゃあ、おやすみ」









名残惜しそうに俺から手を離すと
タクシーに乗り込んだ。

そのタクシーが角を曲がるまで見送ってからも
しばらくボーッとその場に突っ立っていた。








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────ヴヴっ、


どれくらいそうしてたか分かんないけど
急にポケットの中に入れてた携帯が震えてハッとして手に取ると玉からで




”本日ペットはうちで預かりマース”



その一文が送られてきていた。









”なんでだよ？”


”ペットだってたまには家出したくなるでしょ”





そんなやり取りを経て
なんとなくAの気持ちは察した。







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「……はぁ…、」









ため息をつくと
白い息に変わって空気に溶けてく。





あの時、Aに触れて愛しい気持ちで溢れてたのに
彩月からの呼び出しで冷静になり
向かってしまったのは、きっと怖かったから。

ペット以上の関係を持っちゃったら
Aまで俺の前から消えちゃいそうで。

だったらいっそペットのまま
ずっと飼って傍においときたいけど…、






”ひろのことが好き…”







彩月からの言葉に揺れたのも事実。




もう何がなんだか、正解も自分のほんとの気持ちも分かんなくて
またしばらくその場に突っ立ってることしか出来なかった。

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