欲しい愛と、知らない恋 ３

１４２ 玉森side ページ44

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”Aのこと頼んでい？”






急なトラブルで朝早くから仕事してたもんだから
疲れて寝ちゃってて夕方頃に目を覚ますと、届いてたミツからのそのメール。






「頼んでいい…？」






なんだそれ、どういうこと？

寝ぼけた頭でぼーっと考えながら
そういえば今日はAが出てく日だって、朝に仕事しながら聞いたことを思い出した。

ふーん、そっか。

一人で新しい家に帰るAを、俺に頼むってこと？
自分と別れることで
そんなにもAが落ち込むとでも思ってんの？







「ばーか。自意識過剰めっ」








そんな毒舌を吐きながら適当な返事をかえして
またベッドに横になった。









────それが、五時間ほど前の出来事。





今目の前にいるAは
ミツの思惑通り泣いてて、思惑通り俺が来て
思惑通り……、俺がこのまま慰めてていいの？


ミツは本当に
俺とAが一緒にいるのを望んでるのかな？







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「A、ちゃんとミツとお別れできた？」


「………う、ん、」





ヒックヒックしながら泣いてるその振動が伝わってきて
それを落ち着かせるように、とんとんと背中を撫でてやった。








「……なんで、玉ちゃんここにいる、の…？」


「だいたい分かるでしょ？
いつもの如く、ペットが心配なご主人様からの出動命令が出たのよ」


「……出動命令？」


「ペットがキャンキャン泣いてるかもだから
ちょっと黙らせてきてくれよ、って」


「・・・」


「なんかミツに使われすぎて
俺までミツのペットになった気分なんだけど」









好きな子の幸せを願うことが
ほんとのいい男だって、ちっちゃい頃にミツが言ってたことをふと思い出した。

昔からミツは男らしくて
いつもチビ扱いしてるけど、心の中ではかっこよくて憧れてた。

だから、俺だって……、









「もうさ、ペット契約は終わったんでしょ？」


「………うん、」


「だったらもういいんじゃない？」


「え？」


「ペットじゃなくなった今
Aとミツはただの男と女だよ」









こんな結末なんて分かりきってる俺の恋を
こんな状況を利用してまで押し通すのも
男としてかっこ悪いし。









「気持ちを伝えるの、躊躇う必要ある？」








俺なりのミツから教わった愛を
精一杯伝えてあげるよ。



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