欲しい愛と、知らない恋 ３

１３８ 北山side ページ40

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その瞬間に酒の隙間から、甘いAの香りがして
横に視線を向けた。









「お前、酔い過ぎだぞ？」


「…うん、そーう？」


「ほっぺ真っ赤だし、目も赤い」







すぐ触れられる距離にいるその頬に手を伸ばせば
少しだけぴくっ、と反応するとこが好きだった。







「……ねぇ、問題ですっ。
目が赤い動物ってなーんだ？」


「目が赤い？」








突然のその小学生みたいなクイズ問題に
一応ノリよく一瞬頭を回転させて、









「………うさぎ？」







そう答えると
”せいかいっ”って、両手をうさぎの耳みたいにぴょこっと無邪気に頭につけだした。

なにやってんのか、と怪訝な顔で見やれば
それにも怯まず顔を緩ませて
とろけるほどの笑顔を見せる。









「うさぎってね
寂しいと死んじゃうんだって〜」


「あ〜、確かにそう言うよな」


「寂しい、と………ね……、」









両手でうさみみを作ってたその手は
いつの間にか、力なくダレてて
まるでしょぼん、としてしまったうさぎみたいに本当に見えてきた。

そう錯覚しちゃう俺も結構酒飲んだのかもしんないけど


この目の前のうさぎが
可愛くて、愛しくて、離したくなくて。









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「A……、」









焦点を合わさずゆらゆらしてる瞳を見つめて
頬に触れてた手をそのままゆっくりと口元へと滑らせ
その柔らかい唇に触れそうになった瞬間────、









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「……っ、か、帰ろっか。」









その俺の指先をスルーするように放ったひと言。


動きを止めた俺の一瞬のすきを見計らって
だれてたうさみみを、ぴょんっとさせ
すっく、と元気に立ち上がって見せた。







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「帰るぴょーん！！」


「……なんだよ、それ」


「うさぎ風に言ってみましたぁ！」








ぴょんぴょーん！って
さっきまでの空気を変えるように、元気に振舞って。



さっき指先が唇に触れそうになった瞬間の
Aの瞳の奥。








”笑顔の中の、ほんとの気持ち”








さっき、りこちゃんが言ってたこの言葉。








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「……送ってくよ、家まで。」









───ペット契約終了まであと僅か。


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