欲しい愛と、知らない恋 ３

１２７ 北山side ページ29

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「ねぇねぇ、ひろ！
このクッション持ってってもいい？」


「え？これ俺んじゃん」


「すごい触り心地いいから欲しいな〜って」







荷造りをし出してるっぽいAが
ソファに置いてあるクッションを手にして
もふもふ〜、って頬ずりしてる。







「え〜、これ俺もオキニなんだけど〜」


「いいじゃんいいじゃん、引越し祝い」


「ほぼ引越し費用、俺出してっけどな？」


「……ま、まぁそうだよね、感謝してます」


「ふは、いいよ持ってけ持ってけ」


「……いいの？」


「うん、いいよ。
他にもいっぱいあるし」


「やった、ありがとうっ！」







嬉しそうに貰った割には
雑にダンボールにむぎゅぅって詰め込んで
ガムテープで蓋をして。

この荷物がひとつひとつ出来上がる度に
Aが出てくのも近づいてくんだなぁって。








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「よし、今日はもうこの辺にして寝よっかな」


「おう、俺も寝るわ」


「うんっ一緒に寝よっ」








やけに高いテンションで俺の手を引いて
寝室へと入れば、布団つめたーいって先に横になってる。

このテンションが違和感だけど
寂しさを紛らわすように、振舞ってるのかなって。






お互いに”寂しい”って本音を口にしたあの日。


なんでお互い寂しいのに離れなきゃなんねんだろ、って思ったけど
ペットとご主人様って関係なんだから
いつかは離れなくちゃいけなくて、

それが今この時だったってだけ。









「大丈夫だろ、一緒に寝ればすぐ暑くなんじゃん」


「だね〜、ひろの体温高いもんね」


「え？そう？」


「高いよ〜。
ぬくぬくしすぎて、眠くなくてもすぐ寝ちゃうもん私」


「そっか、だから俺は逆にAが冷えてて気持ちいいのかも」


「え？私冷えてるの？」


「いや、冷えてるわけではねぇけど」








一応人間なんだけど、って
一度埋めた俺の胸の中から顔を上げて、可愛く睨んでくる。









「俺にとって、最高のペットだってことだよ」








”ペット”であって”恋人”じゃない。

最初に二人で選んでしまったこの選択肢は
果たして正解だったのかどうかも
今になってはよく分かんなくなってた。

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