欲しい愛と、知らない恋 ３

１２０ ページ22

.



「うわ〜すごい広いねっ」


「え、狭くね？」


「……ひろの感覚がおかしすぎる」








出ていくと決めたその週末。
ひろと一緒に、紹介された物件へと足を運んだ。

少し重い気分とは裏腹に
肌寒い空気ではあるものの
雲一つない、抜けるような真っ青な空だった。









「日当たりもいいですし
建物もまだ新しいので綺麗ですよね」


「そうですね〜、
これでこの家賃なら安いですっ」


「でもお二人で住むには少し狭くないですか？」







不動産の立会人の人が私とひろを交互に見てそう言うから
思わずひろと目を見合わせた。









「いやっ、別に一緒に住むわけではないんでっ」


「あ、そうなんですね。失礼しました」


「い、いえいえ…」


「仲が良さそうだったんで
てっきりお二人で住むマンションを探しているのかと」


「あ、…はは……、」









一緒に住むどころか
一緒に住んでるのをやめて、新しい場所を探してるのに。

カップルに見えちゃってるんだろうけど
ただのペットなだけなのに。








.








「ま、とりあえず保留にしとくか？」


「あ、うん…。
すみません、前向きに検討してみますっ」


「わかりました。
色々と考えてみてまたご連絡ください」







ありがとうございましたー、って立会人さんに別れを告げて
外に出てみると、まだまだ日も高く
二人で空を仰いだ。








.









「まだ昼だし、どっか食い行くか」


「うんっ！
お腹すいたな〜、何食べよう」


「寿司くいてぇ〜」


「お寿司？だったら回転寿司行こうよ」


「は？回転してないとこでいいじゃん」


「だめだめ、たまには庶民的なとこに行くのも大事だよ」


「……まぁいいけど、」


「じゃあ行こっ」







いつも休みの日は家で二人でダラダラしてたり
家でもパソコンでお仕事してるひろを横目にグータラしてたから
こうして二人でデートみたいなことをするなんて久しぶりすぎてくすぐったい。

１２１→←１１９

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す