唇で語れたら。２

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「ただいま〜……、」








玄関を開けると
電気もついてて、リビングからテレビの音がして
こうやって旦那より遅く帰ることなんて滅多にないから
ドキドキしながらリビングの扉を開けた。








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「お、おかえり〜」









ソファから少し振り返ってそう言う旦那に
ただいま、って笑顔を見せた。








・・・大丈夫、大丈夫。

遅くなった理由は
帰り道に事細かく考えて完璧にしたし
シミュレーションはばっちり。









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「遅くなってごめんね。
ご飯食べた？」


「うん、適当に食べてきた」


「そっか」


「てか珍しいね。
遅くまで友達と遊ぶなんて」








特にこっちを振り返ることもなく
テレビを見ながらそう切り出す旦那に
ドクドクと心臓が鼓動を早くする。







大丈夫、大丈夫・・・。









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「あ、うん…。
こ、高校の友達と久しぶりに会ったら盛り上がって話止まらなくなっちゃって…っ！」


「へぇ〜」


「まなみ、って言うんだけど
高校の時仲良かったのに、卒業してから疎遠になっちゃっててさ」


「そうなんだ」


「それが久しぶりに街でバッタリ会っちゃって…！」







聞かれてないことまでペラペラ話す私に
ソファの背もたれに腕を乗っけて突然振り返るから
思わず息を飲んだ。








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「良かったね、久々に再会できて」


「……あ、うん…、」









嫌味でもなんでもなく
素直な気持ちを、素直に笑顔でそう言う旦那は
私のことを一ミリも疑ってない。

その真っ直ぐさにまた
罪悪感が胸をさす。







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「……お風呂、入ってくるね。」


「うん」









────パタン、








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「………はぁー……、」









結局はこうやって逃げ出すことしか出来ない。

罪悪感まみれのこの気持ちから
逃げ出すことしか出来ないんだ。

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