唇で語れたら。

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「じゃあさ、この字と今の俺の字なにが違うと思う？」


「なにが違う…？」









ん〜・・、
圧倒的に違うな、って感じる部分は……、







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「力強さ……、ですかね？」








何度か見た北山さんの書道は
繊細で優しくて綺麗な印象なのに
この作品は、まるで別人が書いたかのように力強い。

でもよくよく見ると
その力強さの中に、今の北山さんの綺麗さと繊細さも表現されてる気がする。








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「…そう、それなんだよ。
今の俺はここまで熱を注いで書けねんだよ」








掛け軸を見つめながらそう呟いた横顔は
明るくチャラい普段の様子からは想像もつかない
寂しそうな切ない表情。




その表情すらもとっても綺麗で
思わず静かな部屋の中で息を呑んだ。



そして見つめているうちに、無意識に
気づけば隣にあった腕をガシッと掴んでいた私。







ん？って驚いて私を見た北山さんに









「・・・絶対書けますよ！！
だって私、正直書道なんて全然分かんないけど
本当に本当に凄いと思ったんです！！
文字だけで人の心を動かせるって凄いと思う！！
それだけの技術があるのに
そんな弱気になってたら、書けるものも書けなくなっちゃいますよ？！
だからもっと自信持つべきです！！
ほら、この前そうめん茹でたとき
私はちゃんと茹でた方がいいって言ったのに
固めがうまい、とか言って強引に早めに茹であげたでしょ？
あの時くらいの自信を持つべき、


「ふはっ、」






「え？」








何だかムキになっちゃって
ガッシリ腕を両手で力強く掴みながら夢中で力説してたら
儚げな表現なら一変、一気に可愛い笑顔に変わった。








「そこで急にそうめんの話になんの？」






話の流れおかしくね？ってケラケラ笑うから
なんだか途端に恥ずかしくなって
ホールドしてた腕の力を緩めると

今度は北山さんが
私の手首を力なく掴んだ。

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