唇で語れたら。

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「なんかかたい、このそうめん」





一口くちにしたゆいと君が
もぐもぐするのを止めて、少し顔をしかめそう呟いた。






やっぱりね、って思いながら、






「・・・(じとっ)」





っと北山さんに目をやりながら私も一口頬張った。









「んだよっ」


「固いんですって、そうめん」


「その固さがうまいんだっつの」






分かってねぇなお前ら、って北山さんも口に頬張ると









「……固っ」


「ほらぁ！！」


「いや、でもこれくらいがうまいな」


「絶対強がってますよね？！」


「んなこたない」


「うそぉ？！」


「顎が鍛えられるぞ」


「…そうめんで鍛える必要あります？」


「んはは、ねぇか」





そして、笑いながらまた頬張って




「でもそうめんはうまいよ」




って、私が買ったそうめんを褒めてくれた。








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「俺あといらないっ、遊んでくる！！」


「はぁ？もっと食えよ」


「だって固いもん」


「おまっ、

「じゃあいってきまーす！
おふたりでごゆっくりー！！」


「……っ、ご、ごほっ…、」






なっ…！何よごゆっくりって…！！

って動揺しすぎてむせる私をよそに
そんなの気にする様子もなく

ちゃんと授業の時間までに戻ってこいよ〜、って
駆けて出ていくゆいと君に声をかけた。









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──パタン、
と扉が閉まると途端に静かになった部屋。

その静けさに何だか急にソワソワして
”二人っきり”っていうこの空間を
妙に意識してしまう。









「あ、あの、ゆいと君だけいつも来るの早いんですね？」






静けさに耐えきれずそう切り出すと






「そうそう、あいつの両親共働きだからさ
学校終わったら直でここ来て
教室始まる時間まで遊びに行ったりしてんのよ」


「へぇ〜、それはご両親も助かりますね」


「まぁ別に何かしてやってるわけでもねぇけどな」







そう笑う北山さんだけど
このご時世、そういうのは大事だと思う。

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