はじまる、恋。６

２４６ 北山side ページ7

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「A…、」








俺の下で、溢れる涙を俺に見られまいとしているのか必死に拭ってる姿に
心臓が押し潰されそうになる。





泣かせたいわけじゃない。

ただ、触れたいだけなのに。

ただ、触れてほしいだけなのに。

ただ・・・、
好きなだけなのに。









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「……っ、ご、ごめんなさい…っ、」






目にゴミが、って何とも分かりやすい嘘をついて
まだ触れたらすぐにでも零れそうに潤ってる瞳で見つめられて
俺のTシャツをギュッと握りしめる愛しい手。








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「……前にも、こんなことあったよな」


「……え？」









俺の下で、涙を流しながら
”たいすけ”って呼んでいたあの夜。

きっとあの瞬間から
俺の恋は始まってた。









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「…藤ヶ谷が好きなんだろ…？」









Tシャツを握りしめていたその手を離してそっと包み込めば
またひとつ、涙がこぼれる。








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「……ちがう、………ちがうよ…っ、」









包み込んだ俺の手を強く握りしめて
イヤイヤする子供みたいに、首を振って否定してくれるけど









「A、ちゃんとこっち見て」


「…っ、やだ…っ！」


「Aってば、」


「…いや…っ、」









シーツを濡らすほどにもう止まらないその涙とギュッと瞑ってる瞳に
堪らず両手で頬を包み込んだ。




俺だけがずっと触れると思っていた
大好きなAのほっぺた。









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「…自分の気持ち、気付いたんだろ？」


「・・・」


「Aがちゃんとしないと、またここで俺に抱かれて藤ヶ谷に罪悪感持つんだぞ？」


「・・・」









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ひとつひとつ
ゆっくりと自分にも言い聞かせるようにそう言うと
真っ赤な瞳が俺を捉えて揺れるから

また守ってあげたくなる。
離したくなくなる。




その気持ちを隠すように
ひとつ息を吐いた。

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