HONEY LOVE １

＊ ページ18

───北山side





「………吐くなよ？」








隣に移動してくると
酒のせいか潤んでる瞳で見つめられて
自分で気付いてんのか分かんないけど、

めちゃくちゃに誘ってるぞ、こいつ。









「吐かないです、もったいないから」


「ふは、そういう問題かよ」


「へへ、だってお酒もご飯もおいしかったんですもん」


「そりゃ良かった、また一緒に来ような」


「はいっ！」


「・・・」









また誘ってるってのに
ふわふわと、嬉しい〜って笑ってるだけで
なーんにも気付いてないこの感じ。

鈍感なのか、作戦なのか。

いや、作戦ではないよなこれ。








.








「どうする？このあと、もう一軒行く？」


「ん〜、北山さん大丈夫なんですか？」


「うーん……、」








好みか好みじゃないか、っていったら
好みのタイプなわけですし。

今日初めてここまで二人で色々話してみて
内面的にもすげぇいい子だなって思ったわけですし。






.









「うちでちょっと飲み直す？」


「え？」


「俺んちで。
だいぶ酔ってるし、ゆっくり飲み直そっか」


「………う、ん……？」









さすがにここまでくると
酒が回ってても状況を飲み込めてるのか
歯切れの悪い返事と、戸惑いの眼差し。


こういう反応がちょっと俺の心をくすぐってしまう。








「ほら、猫スーツ来てた時に散々お世話してもらったでしょ」


「……いえいえ、そんな、」


「だから今からは、俺が世話したげるよ。
このまま一人で帰ったら危ないし」








少し距離を詰めると、びくっと微かに反応するから
顔を覗き込んで、見つめてみた。









「……大丈夫。
まだ狼にはならないように我慢するから」









.









まだもう少しだけ。

猫のスーツ(着ぐるみ？)をかぶったままで
狼の姿は隠しといてあげるよ。





だからゆっくり、
距離を縮めていこうかな。








.









───Fin

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