蜜色の一雫

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「え〜、でも、」


「ほらあれだよ、きっと。
結婚してたら子供とか出来て抜けられのが怖かったりするんじゃない？
具合悪くて迷惑かけちゃったりするし」


「え〜？」


「そうだよ、そう！
ほら、サラダ取ってあげるね」






そうかな〜？ってまだ納得してない様子のミキちゃんに
取り分けたサラダを押し付けて
自分の分も取り分けようとした時、



ばちっ、と北山さんとまた目が合って
慌てて勢いよく逸らしてしまった。






………既婚者がなに意識してんだろ。

こんな私みたいなの相手にされてるはずもないのに。







「き、北山さんにも取り分けましょうか？」


「あ、うん、あんがと」





変に意識をしてしまわないように笑顔でそう言うと
北山さんも笑顔でお皿を差し出してくれた。


それを受け取る瞬間に僅かに触れた指先も
冷静を装って。







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「ごめんミキちゃん、私そろそろ帰るね」






新年会がスタートして一時間ちょっと
せっかく盛り上がってきて楽しいとこだったけど
時間も時間だし、ミキちゃんにだけそう告げて
こっそりと後ろに置いておいた荷物を手にした。






「もう時間ですか？」


「うん、ごめんね。
あんまり飲みすぎないで、部長とか酔っ払いに気をつけてね」


「ふふ、大丈夫ですよ。
Aさんこそ帰り気をつけてくださいね」


「わかった、ありがとう」






可愛いミキちゃんを残していくのは心配だったけど
反対隣の先輩に託して私はそのまま席を立った。







「ご馳走様でした〜」






お店の店員さんにそう告げて外へと出ると
もう当たり前だけど真っ暗で
週末特有の賑やかさが漂っていた。






「井上さんっ」





その時後ろから声が聞こえて振り返ると
上着と財布を手にした北山さんが立っていて、







「あれ？北山さん？」






その姿に一瞬ドキッとしたけど
幹事である彼に声もかけずに出てきちゃったからかな、と思い
私も北山さんのとこへと駆け寄った。

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