蜜色の一雫

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「あ………の、本当に大丈夫ですよ？
取引先との約束あるんですよね？
そろそろ行かないと遅れちゃうんじゃ」





そう話してる間にも
北山さんは私にコップと薬を渡してくれて
飲むように促されるから、とりあえずそれを飲み干して。





「はいっ、もう平気ですっ」


「よし、じゃああとは眠りにつくまでそばに居る」


「え？」





私が寝るまでそばに居る……？

熱のせいの幻聴なのかと思ったけど
私の肩を押してベットに沈めると
その上に布団をかけてくれた。





「俺が逆の立場だったらさ
弱ってる時くらい、誰かにそばにいて欲しいって思うもん」




不意に布団の中で無防備にしていて手のひらに触れた何か。

絡まるあたたかいそれが
なんなのか理解するのに相当時間がかかってたと思う。





「……………？」


「寝て？寝たら勝手に帰るから」





寝てる私の髪を撫でてくれる手のひら。

そこでようやく、布団の中で触れてるのが北山さんのもう片方の手のひらなんだって理解出来た。






「はっ…………！えっ、」


「はい、目瞑るっ！」


「えっ、は、はいっ！」





動揺する私を有無を言わさないような感じで言われて
私も私でつられて素直に勢いよく目を瞑っちゃうし。

そんな姿にまた北山さんはクスクス笑ってる。





「こんな時くらい
何も考えないで休んだらいいよ」





繋がれる手。
優しすぎるくらいの声と言葉。
冷たかったはずの布団も
じわじわと温まってくる。






「はい…………。」





なんだか泣きそう。

ドキドキしたり、焦ったり
ドライブデートに浮かれたり、泣きそうになったり。

情緒不安定か、って突っ込みたくなるけど
それくらい私にとって北山さんは
全てを揺さぶってくる存在なんだ。







「そのまま寝てていいからさ……、
子守唄がてらちょっと勝手に話していい？」





撫でられてる手のひらが気持ちよすぎて
とろとろになりながら、小さくそのまま頷いた。





「俺さ、本社に異動になる前から
井上さんのことは知ってたんだよね」






あまりの心地良さに意識が飛びそうになる中
その言葉ひとつひとつをひたすらに感じていた。

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