蜜色の一雫

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昨日はあれから実家に帰って
"もう別れるから"とだけ報告して
もう物置と化してるもとの自分の部屋へと閉じこもった。

旦那のいい加減さを知らない両親だから
私が責められるのは目に見えてる。

それでもそんな私をなんやかんや言いながらも
結局は布団も用意してくれて、ご飯も用意してくれて
周りの温かさをひしひしと感じていた。





「仕事……、行きたくないな……」




そろそろ起きて支度をしないと会社には間に合わない時間。
懐かしい匂いのする布団の中でそう呟いた。

今までどんなに疲れてても
どんなに体調が悪くても
仕事を休むことだけはしたくなかった。

でもさすがに精神的にも参っていたせいかしんどくて
布団から起き上がる気力すらない。






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「A？仕事の時間大丈夫なの？」


「うん………。」


「落ち着いたら降りてきなさい。
朝ごはん準備してあるから」


「……ありがと。」





私が会社に行く気力すらないことを
分かってるのかそのまま部屋を出ていく母。

まだ鏡すら見てないけど
絶対泣きすぎて酷い顔してるし
意を決して会社へと休みの電話をかけた。





「あ〜………、ズル休みしちゃった…」





今までずっと働くことでしか自分の価値を見いだせない気がして
がむしゃらにひたすら働き続けた。

それが今になって
張り詰めた糸が切れたように何もする気が起きない。

これはいいことなのか、悪いことなのか……。





それからまたいつの間にか眠ってしまっていたみたいで
ふと目を覚ますと、もう時計はお昼の時刻を指していた。

と、その時

ヴーヴー……、とベットサイドに置いてある携帯が震えて
手に取ってみると知らない番号からの着信。

旦那だったらどうしよう、と思いつつも
恐る恐る通話ボタンをタッチした。






「…………もしもし？」


「あ、井上さん？」





その不安な気持ちを一気に吹き飛ばすほど
聞き慣れた安心する優しい声。





「北山さん………？」


「そう、良かった〜繋がった」





電話の向こうから安堵した声が聞こえてくるけど
あれ？なんで私の番号知ってるんだろ……？

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