蜜色の一雫

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「お、おいしい……つ！！」




北山さんの好きなご飯をご馳走するつもりだったのに
結局私に合わせてくれたのか、彼のお腹の足しにもならないようなカフェ。

それでもハンバーグが乗ったオムライスを頼んだ北山さんと
パンケーキ一択の私。





「うまいっしょ？」


「やばい、おいしいです！
こんな店が近くにあったなんて知らなかった〜」


「いつもどこで食ってんの？」


「私あんまりお昼食べないので」


「は？」






その声にハッとしてパンケーキを食べる手を止めた。

お昼食べない、だなんて
また要らぬ心配をかけてしまうような………。





「あ、のっ、食べますけどね！」


「ふーん、何を？」


「い、色々と……」




きっとバレバレな嘘。

口の端っこに可愛くオムライスのソースを付けて
不貞腐れてるように怒ってるお顔。





「まじさぁ……、なんか心配通り越して
俺井上さんの兄ちゃん、いや、父ちゃんになった気分だわ」


「えぇ？！」


「次から次へと心配かけてくる娘」


「そ、そんな……、」





年なんて全然北山さんと変わらないのに
娘扱いされる始末。

確かに心配かけてるのも事実だけど
やたらと気にかけてくれるから
今までの自分の無謀さが急に思い知らされるというか。






「ちゃんと飯は食わないと。
それじゃなくても人より働いてんだから」


「でも朝はちゃんと食べてるし
ちょこちょこ甘いものつまみたいし」


「甘いもんと飯は別だろ」


「でもご飯も甘いものも食べてたら
ぶくぶく太っちゃいますよ」


「太れ太れ、痩せすぎだ」


「分かってないです、お腹とかやばいんですから」


「腹なんて柔らかいくらいが俺は好き」


「嘘だぁ」





そんなこと口では言ってたって
なんだかんだで痩せてる子が男は好きなの分かるもん。

そんな気持ちを込めて疑いの眼差しを向けると
急に身を乗り出してきて、口元に手が伸びてきた。





「？！？！？！」


「クリームついてる」





グイッ、て指先で口の端を拭われて
思わず手にしてたフォークをカラーン……、とテーブルに落としてしまう。

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