蜜色の一雫

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「……………ん………、」





暑すぎる体温で目を覚ますと
部屋の中は真っ暗だった。

しばらくボーッとして頭を働かせる。







"奪いたくなるんだよ"






「っ！、ひーーーっ、///！！」






頭の中でリピートされたあの声。

冷静になった今、抑えきれないほどの声で発狂してしまった。





「ま、まってっ、えっ？！？！」





起き上がり頭を抱えて必死で考える。





あれ、奪いたくなるって私のことだよね……？

しかもキスもされたような…………、







…………ダメだ、また熱が上がる。





せっかくちょっと良くなったっぽいのに
北山さんの言葉を、体温を思い出すだけで
体がまた熱くなる。






「ただいま〜」





その時聞こえてきたその声にハッとした。

旦那の声とリビングの扉が開く音。

まだなんの確認もしてないけど
北山さんが来た痕跡とか………っ！





「A？いないの？」




慌ててベットから降りようとすると
まだ少しクラクラしてるのか、ドサッとベットから盛大に落ちてしまった。





「あれ？寝てるの？」





その音に気付いたっぽい旦那がこちらに近付いてくる足音が聞こえる。

もう北山さんはいないし大丈夫なはずだけど
なぜかドッドッドッ…、と緊張感が増す。





━━━━ガチャッ、


「どうした？」





パチッと電気をつけたせいで一気に明るくなった目の前。

不思議そうな顔をしてる旦那が目に入って
慌てて立ち上がった。






「ご、ごめんっ、ちょっと具合悪くてっ」


「え？そうなの？風邪？」


「うん、そうみたい……。
ちょっと寝たらだいぶ良くなったんだけど」


「そっか、大丈夫？
最近風邪流行ってるからね〜」





私のそばまで来てくれた旦那に
なぜだか目を合わせられなかった。

この部屋でキスをしてしまった罪悪感なのか
あんなに優しくされた後に旦那という現実に向き合いたくないだけなのか。





「なんか買ってこようか？」


「大丈夫。ゼリーとか食べたから」


「そっか。
じゃあ俺のご飯ないよね？ちょっと外で食べてくるね」


「あ…………うん。」





別にこんなの普通の旦那の対応だよ。

今までの私ならなんとも思わなかったはずなのに
彼の優しさや温もりを知っちゃったから………。




少しずつきっと
旦那に対する心に溝が出来てきていた。

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