SEVEN WISHES

渉 １ ページ10

「お腹すいた…、」









仕事のお盆休みで、久しぶりに帰省するも
両親はなぜかふたりで仲良く温泉旅行。



商店街の福引きで当たったんだとかで、帰省中の娘を残して旅立ってしまった。









「なんか食べに行こっかな」









ひとりで家で食べるのも寂しいし、適当にその辺をぶらついておいしそうなお店を探した。




昔はド田舎だったこの町も、今ではお洒落な店が並んだりしていてすっかり変わっちゃったなー、なんて思いながらもゆっくり歩いていると
ふと目についた看板。









「お洒落なお店〜」









そして、なぜだか吸い寄せられるように入った店は、お洒落な看板とお洒落な外装。


それでいて、入りずらい雰囲気もなく気軽に入っていけるようなそんなお店。






.









「こんにちは〜」








入り口を開けると、カランカランと鳴り奥の方からひとりの男性がやってくる。









「すいません、まだオープン前なんですけど…、




そう言って私を見るなり、無言で指を指して上から下まで舐めるように見つめられる。









「・・え？」









な、なにっ・・？


あまりにも凝視されるもんだから怖くなってきて、思わず後退りすると
ガッ！と両肩を掴まれる。








「ひっ…、

「Aっ！！Aだよねっ？！」









とっても嬉しそうな笑顔で見つめられたその人をマジマジと見てみると
スラリと伸びた長い足と腕。


まるでモデルのような出で立ち。



あれ・・・、



この姿、どこかで・・







.






「あっ！渉っ？！」


「そう！渉っ！！」








.







学生時代に仲良しグループで一緒だった横尾渉。


グループで一緒だったものの、直接ふたりで遊んだこととかはなかったし
卒業と同時に疎遠になっていた。









「えっ、なんでここにいるのっ？」


「俺いま、ここで店やってんの」


「店をやってるって…、渉が経営者ってこと？！」


「そうそう、ずっと店だしたくてさ。
最近ようやく夢が叶ってオープンすること出来たんだよね」









嬉しそうに話すその姿も
滑舌があんまり良くないところも
学生時代と変わってない。









「あ、まだオープンまで時間あるけど座っててよ」


「いいの？ごめんね？
オープン時間も見ずに、なんかこの店に引き寄せられてさ」


「ほんと？それはすげー嬉しいわ」









カウンターの向こうからおいしそうな香りがしてきて
ぐぅ、とお腹が鳴る音がした。

渉 ２→←太輔 ３

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す