SEVEN WISHES

太輔 ３ ページ9

「Aはいま何してるの？」


「東京で平凡にOLしてるよ？」


「そっか、東京か。
仕事、辞める予定とかないよね？」









その突然の質問に思わず太輔を見上げて首をかしげる。







今の仕事を辞める予定って・・



えっ、どういうこと？









「うそうそ、ごめんさっきの質問忘れて」






はは、って笑って頭をポンポンってして立ち上がる太輔に
咄嗟にその手を掴んでいた。









今この手を離したら、また太輔は遠い存在になってしまう気がする。









「…ねぇ、どういう意味？」


「だから、何でもないよ」








「・・・・・やめる、」


「え？」


「私、仕事やめるっ！！
それで、太輔の福岡についてくっ！！」









手を掴んだまま立ち上がって、空いていたもう片方の手も握りしめて向かい合う。









「決めたっ！
もう太輔を遠い存在だなんて思いたくないもんっ！！」








何を思ったのか自分でも分かんないけど、突然に興奮気味にそう宣言した私にビックリしてる太輔。


そして、思わずギューっと強く握りしめてしまったその手を不意に引っ張られて
そのまま私は太輔の香りに包まれた。









「やっと俺に手伸ばしてくれた」


「・・え？」


「Aはいつからだったか、俺をわざと遠ざけてたからさ」









太輔の胸元にくっついてる私の耳から
どんどん早くなる太輔の鼓動が聞こえてくる。









「俺に、ついてきてくれるの？」


「うんっ！よろこんでっ！！！」









.









手が届きそうで届かない存在、なんじゃなくて
手が届きそうなのに、手を伸ばそうともしてなかったのは私の方だったんだね。









「よし、このままAの親に挨拶に行こっかな」


「えぇっ？！気が早くないっ？！」


「善は急げ、って言うからさ♪」









懐かしい太輔の部屋で
大人になった太輔の香りに包まれながら
初めてのキスをした。









〜fin〜







NEXT＊横尾さん♪

渉 １→←太輔 ２

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す