はじまる、恋。

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「あれっ？今日藤ヶ谷さんいないんですか？」


「藤ヶ谷は今日別の仕事あって遅れるって〜」


「そうなんですかっ！」









あれから仕事を終えて家に帰って
手のひらに書いてもらった番号に電話しようとしたら
もはや滲んでしまっていて、結局連絡も出来なくて。




まぁ、私なんかから連絡が来ないからって藤ヶ谷さんには何の支障もないだろうけど
私なんかが藤ヶ谷さんに連絡せずに無視したって思われるのも何だか嫌だし。









「もしかして阿部ちゃん、藤ヶ谷のこと狙ってんの？」


「えぇっ？！？！」









ストレッチ中の北山さんと、隣にいた二階堂さんまで一緒になってニヤニヤしてる。









「阿部ちゃんに藤ヶ谷は無謀じゃね？」


「わ、わかってますよっ！
ていうか、別に狙ってるとかじゃないですしっ！！」


「じゃあなんで、いないって聞いて残念そうにしてんだよ〜」


「……ほらっ、昨日のしゃっくりで助けてもらったんでお礼を言いたくて」


「ふ〜ん」









相変わらず二人でニヤニヤしながら、ペタンと開脚してて
なんだかそれを凝視してるのも恥ずかしくなってきて
じゃあ、って慌てて背を向けて歩き出そうとすると









「阿部ちゃん」









急に甘く呼ばれたもんだから、振り向くと









「阿部ちゃん、体柔らかい？」


「えっ！？」


「開脚してペタンってつく？」


「ん〜…、どうだろ？昔はついてましたけど…」


「ちょっとやってみて？」









隣にいた二階堂さんに
どけ、ってジェスチャー付きでどけさせて
こっち〜、って手招きされてるけど…、









「やっ、やらないですよっ？！」


「なんで？」


「逆になんで今、開脚しなきゃなんですかっ？！」


「阿部ちゃん、ちょこまか動いてっからストレッチしといた方がいいかなって思って」









怪我したら大変じゃん？って、もっともらしいことを言われて立ち尽くして戸惑う私。


それを見かねて
みつの言うこと聞かなくていいから、ってフォローしてくれる二階堂さん。









「わかった、阿部ちゃん自信ないんだろ？
どうせ、ペタンってつかねんだろ？」


「つきますよっ！！！」









.









・・・はっ！！








私のその言葉に
途端にニヤリとした北山さんに、してやられた。









ぬぬぬ。


挑発に思わずのってしまったじゃないか。

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