キミトノキセキ

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「A？」









携帯越しに聞こえるその優しい声に
それだけで涙が出そうになるほど安心した。


真っ暗な道に、一筋の光が灯ったような感覚。









.




「全然連絡来なかったから、てっきりあの紙に気付いてなかったのかと思ったし」


「ごめん、ちょっと体調悪かったりでなかなか携帯も触ってなくてさ…」


「…そんなに体調わりーの？」


「いや…、今はもう全然大丈夫っ！
ピンピンしてるっ！」









思わず見えもしないのに、元気ポーズを作ってそう言うと
聞こえてきた笑い声に耳がくすぐったくなる。








.









あれから一週間以上も連絡しなかったのは
もちろん体調が悪かったからじゃない。





ずっと携帯を取り上げられていたから。




偶然にもお兄ちゃんからメールが来て
それをきっかけに携帯を返してもらえた。








.









「あ、ごめんね？
いま仕事中だよね？」






ザワザワとみっくんの声に混じって聞こえる周りの声








「ん？いや、大丈夫
いや昼休憩中だからさ、カレー食ってる」


「あ、いいな〜カレー！
私もなに食べよっかな〜」


「これから昼飯？」


「うん、さっきまで掃除とか洗濯してて
あっという間にお昼っ！」


「ふ〜ん、ちゃんと主婦してんだな
あんなに兄ちゃんとか俺にくっついてばっかだったのに」


「だからもう大人だってば〜！」









またこうやって自然にいつも通りに笑って話せて
本当に本当に楽しくて
ずっとこうしていたい、って思ってしまう。







.






「あのさ、これからこうやってちょくちょく電話しね？」


「えっ？電話？」


「ほら、また体調悪くなったりとかしたら心配じゃん？」


「う、うん…、」









正直、すごく嬉しい。

またこうやって電話越しでもいつでも話せるなら。









でも・・

渉にバレたらまた・・、









「旦那が心配する？」







しばし沈黙があった空気を察してか、みっくんがそう言って沈黙を破る









「昼なら旦那いないっしょ？
だから、昼にかけてくれたら俺も出れるし」


「…いいの……？」


「おう！
電話がおわったらちゃんと履歴は消して、俺があげたその紙は処分しとけ？」









え・・？







そのみっくんの言葉に心臓がドクンとはねた。








なんでそんな事言うの？




もしかして、暴力を受けてることに気付いてる・・？

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