キミトノキセキ

１２ 北山side ページ12

次の日、昼休みにまたAのいないお店へと向かう。








「あ、北山さんっ！」




俺を見るなり駆け寄ってきたAの先輩の七海さん
席へと案内されながら、昨日のことを報告した。







.








「そうですか…、会わせてはもらえなかったですか…」


「まぁでも今日行ってみて、また報告しに来るから」


「はい、お願いします」


「それにしても、もし暴力とかうけてんなら実家に避難するなり出来ないのかな〜？」


「…あれ？聞いてません？」









水を差し出されてそう言われて
思わず首をかしげると
少し躊躇しながらも、小さな声で話始めるその声に
耳を傾ける。









「Aちゃん、悲しそうに笑いながら
私ひとりぼっちだなー、って言ってたんです」








.









それから、Aの家族のことを聞いて胸が苦しくなった。





藤ヶ谷が海外に行ってしまったのは知ってるけど
お父さんまで再婚してたなんて・・。


全然、知らなかった。









「お父さんとお兄ちゃんに心配かけないためにも、旦那さんと幸せな家庭を作らないと、って…
旦那さんがいなくなったら、私ひとりになっちゃうって…。
だから、何か旦那さんにされてても逃げられないんだと思うんです」









そう話してくれた七海さんは、泣きそうになりながらも他のお客さんに呼ばれて
ペコって頭を下げて仕事へと戻っていった。







.









「…んだよ、それ…」






思わず頭を抱えて、テーブルへとうなだれた。







昔と変わってないあの笑顔の裏には
たくさんの我慢と寂しさが隠れていたんだ。




なんでそれに気付いてあげられなかったんだろ・・




.









昔からこの気持ちは変わってない。



Aのことを守ってやりたい、って気持ち。

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