嘘つきなキス

４８ 北山side ページ48

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「あれ、玉とAは？」



ライブハウスが数多くあるこの街は、バンドマン達御用達の朝までやってる居酒屋がたくさんあり、俺らがいつも使う〖虚無〗は財布に優しく、広い個室があり、センスのいい音楽がいつも流れてる、うるさすぎず、静かすぎない居心地のいい和風居酒屋だった。



「玉さん帰っちゃったんだよね」



宮田の言葉に嫌な想像が頭をよぎる。




「Aちゃんとどっか行っちゃったんじゃない？」「ばかっ、ニカっ！！」


「いたいっ！！」




すぐさま宮田に頭を叩かれる二階堂。




「まぁいいや、あのさ、ちょっと相談があんだけど」



今はAのことを考えてる場合じゃない。

桜井さんから言われたことを二階堂と宮田に伝えると
二人は意外にも喜んでくれた。



「良かった、正直反対されっかと思ってた」



「桜井さんのところなら安心だし、変な契約とかもないだろうし、売れないって判断したらすぐ手引くだろうし、俺らとしても気楽かも」



二階堂の言葉に、



「けど今までよりは忙しくなるだろうし、もっとあちこちのライブハウスでツアーするってなったら昼の仕事は難しくなるんじゃない？」



宮田が不安そうにつぶやく。



そうだ、一番の問題はそこだ。



俺はいい。自分の人生、自分で責任を取る覚悟はある。
でもそれを二階堂と宮田に強要することはできない。

２０代半ばにもなって音楽にかけて、バイト生活に戻っていいのだろうかという不安はよく分かるから。

上手く行きませんでした、で、すんなり再就職先が見つかるとは限らない。



どこかのレーベルに所属するということはそういうことだ。



上手く行けばメジャーへの道も開ける。
でもダメな場合だってある。



「よく考えて、二人とも答えを出してくれないか……？」




焦ったらダメだ。
二度と、あの時と同じにはなりたくないから。



俺の言葉に二人は黙って頷いた。

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