47 北山side ページ47
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「インディーズデビュー?」
「そう、まずはそこから始めてみないか?」
そう言って渡された名刺を見て俺は驚いた。
「桜井さん、独立したんすかっ?」
そこにはもうベックスの名前はなく
S1−レコード 代表取締役、桜井 篤史
と書かれている。
「大手はしがらみが色々多くて自由もきかなくてね」
「分かります」
いわゆる市場の7割を占める大手レコード会社からメジャーデビューすることは、企画、販促、流通を担ってくれると同時に、自分たちの音楽の企画段階からレコード会社が首を突っ込んでくるという意味合いを持つ。
勿論贅沢な悩みではあることは承知だけど。
「一度はメジャーデビューを勝ち取った過去があるミツには大した話じゃないかもしれないが」
「いえ、もうあの頃の"KISS"とは違いますから……」
あいりも、藤ヶ谷もいない。
「その代わり、ミツの歌声、
それと…新しく加入したベーシストの玉森くん、あの子も光ってるじゃないか」
「あ、有難うございますっ」
「今はインディーズと言ってもネット宣伝も出来るし、俺は大手とも業務提携をしたりもしてるからCDを全国に流通させることも出来る。そう悪くないと思わないか?」
「それは勿論、悪いどころか良すぎる話ですけど、どうして突然?」
俺の問いに、顔を曇らせる桜井さん。
「同じ夢をかつては見た身としてはね
あの時の君らには大変なことをしたって
責任も感じてるんだ」
「そんな……桜井さんのせいじゃないです」
「まぁ、独立までに色々と数年要してしまったけどね。今は経営者兼プロデューサーとして曲のアレンジや提供なんかもしてるんだ」
「すごいっすね」
桜井さんもまた音楽に魅入られ、音楽を愛して、音楽に身を捧げてきた人間なのだろう。
出会った人の中でも、数少ない尊敬に値する人の一人だ。
「というわけで、新しいアルバム制作どのくらいで行ける?曲は2曲ぐらいは提供できるけど」
言われて、ぶわっと鳥肌が立つ。
「あ、インディーズデビューシングルは
是非 "KISS"の代表曲、FREEZEでやらせて欲しいな」
「あ、あのっ、メンバーとすぐ前向きに話し合います。そして連絡します」
「そうだな、いい返事待ってるよ」
興奮冷めやらぬまま桜井さんと握手を交わした俺は
急いでメンバーのいる打ち上げ場所へと向かった。
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くまのこ(プロフ) - だいぶ出遅れました…はちみつさんとはちみつさんの書くお話が大好きです!終わらせずに受け継いでくださったことを感謝致します!他のお話楽しみにしてます〜!はちみつさん好き!!!! (2020年1月15日 11時) (レス) id: 9fffa79d91 (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - はちみつさん!!全然気にならさらないでくださいーーー!!はちみつさんが書かれるお話は何でも大好きなので!!!←声を大にして笑!わざわざメッセージありがとうございます!!これからもコメントいっぱいさせていただきますっ!笑←迷惑な奴(笑) (2019年12月28日 18時) (レス) id: 773bebed2a (このIDを非表示/違反報告)
ユーミン(プロフ) - お疲れ様です。こちらは楽しく読ませてもらってるので書かれるのは大変だと思います。 (2019年12月28日 17時) (レス) id: 3a1ba1b625 (このIDを非表示/違反報告)
mora(プロフ) - なんと!!!消してしまうんですか!?えーん…このお話も、好きなのに残念です(T▽T) (2019年12月28日 16時) (レス) id: daf44fdab0 (このIDを非表示/違反報告)
みちこ(プロフ) - あら残念(^_^;)途中きっとこの北山さんは主を好きになるのかなと期待をしていたのですが(^_^;)作者様の意向ですから仕方のないことです(^_^)キラハグ、恋愛注意報は楽しみにしています!今年も沢山楽しませてもらいました(^^)良いお年を! (2019年12月28日 12時) (レス) id: 95022a0a60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はちみつみゆ. ましろ | 作成日時:2019年10月2日 19時