嘘つきなキス

３８ 回想Ki ページ38

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最初は男４人、女４人で向かい合ってカラオケを楽しんでいた俺たちだったけど
トイレに行ったり、ドリンクを取りに行ったりしてるうちにどんどん席が入れ替わっていく。




二階堂なんていつの間にか一人の女子とかなりいい雰囲気になってるし。



宮田もアニメヲタクの女の子と
アニソンの話で盛り上がってる。



千賀はめちゃくちゃ熱唱してるし。



いつの間にか俺の隣りは両方とも女の子で
そのうち一人の子はひっきりなしに俺に話しかけてくる。



「北山くんて彼女、いるの？」



「いないけど」



「ふーん、じゃあ立候補しちゃおうかな」



「マジで？」



って笑いながらも、心の中では全然タイプじゃね〜な、なんて酷いことを思う。



「ねぇ、LINE交換しよ」


「ん？ああ、ちょっと待って」



カバンから携帯を取り出しながらも
反対側に座ってる子のことが少し気になって
ちらっとそっちを見れば、千賀の歌をちゃんと真剣に聴いていて、手を叩いたり、拍手したりしてる。



今どき珍しく化粧もしてなくて、きちんと一つに髪も縛っていて、
どこからどう見ても真面目そうな子だった。




「ねぇ」




声をかけてみたけど、気づいてくれない。




「ねぇ、聞いてる？」


「え？わ、私？」


「そう、私。ねぇ、名前、なんて言うの？」


「え？」




名前を聞いただけなのに
目を丸くして俺を見つめ、そのまま固まってしまう。




「あー…俺に訊かれんの嫌だった……？「違います違いますっ！！」


食い気味で否定して
むちうちになるんじゃね？ってくらい
ぶんぶんと首を横に振る姿が何だか可愛く見えて



「あははっ」



思わず笑ってしまった。




「俺は２−Ｂの北山、北山、宏光」


「あっ、あの、２−Ｃの、藤崎、藤崎あいり、ですっ」




それが俺とあいりとの出逢いだった。






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本当は反対隣の子の痛い視線には気づいてたけど
気づかないふりをして、あいりと話を続ける。




天然記念物並に見た目の地味なこの女子高生
藤崎あいりは、俺と話している時でも、他の人が歌い終わった時には必ず拍手をする。


そんなことをしてるのはこの中であいりだけで。



それに、すごく感動した。





「あいりは歌わねぇの？」


「私は……いいかな」


「え、歌嫌い？」


「嫌いでは、ないけど……」


「あいり、次の曲歌いなよ」



その時、突然反対隣の子が強引に
あいりにマイクを手渡した。

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