嘘つきなキス

２５ 北山side ページ25

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「へぇ、Aと？」






ライブ前の楽屋、玉森から聞かされた先週の打ち上げの話。

変わった子だね〜、ってお互い髪の毛を弄りながら
鏡越しに目が合う。








「俺あの子にハマらなかったのかな〜」


「いや、本気で具合悪いと思っただけだと思うけどな」


「あの子さ、ミツに抱かれる順番待ちしてたよ」


「順番待ち？」


「なんかミツの女の子達にはどうやら順番があるらしくて」


「……初めて聞いたんだけど」


「んはは、やっぱそうだよね〜」








律儀に順番守ろうとしてたとこを宮田に打ち上げに誘われたらしいよって玉森が教えてくれる。

順番って、
そんなん初めて聞いたし、適当に選んでたことしかないんだけど。









「ちょっとミツがあの子を特別扱いする意味が分かった」


「え？別に特別扱いなんてしてなくね？」


「してるよ〜会場から直接連れてくなんて初めてじゃん」


「あれは………」








さすがにファンの子に手を出してきた中で
"初めて"の子ってのは俺も初だったから
その後が気になったというか、一応責任も俺なりに感じて。









「ちょっと色々あってな」









とは言えず、さすがにAの名誉の為に言葉濁すと
ふーん、ってそれ以上深く聞いてはこなかった。









「またライブ来るって言ってたよ」


「そっか」


「今日ミツがあの子連れてかないなら
また打ち上げ誘おっかな俺」









そう言うと準備を終えたらしく立ち上がり
そのまま宮田のとこへちょっかいを出しに行ってしまった。








「みーやーたー」


「うおっ、なんだよ玉〜」








そんなじゃれ合う声を聞きながら考えていた。




玉に誘われたのに何もしなかったってのがとにかく意外すぎるし
なんなら俺と同じでさほどファンの子に興味もない玉森が
またAを誘おうとしてることも意外すぎた。






だからなのかなんなのか
今日はAを選ぼうかなって
柄にもなくライブが始まる前からもうそんなことを思っていた。

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