嘘つきなキス２ (ページ8)

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実家で過ごすお正月は至れり尽くせりで、とても楽だけど、どこかいたたまれない気持ちになるのも事実で。

元旦の昼、出かけてくる、という弟の涼を玄関まで見送ると、

「姉ちゃんは彼氏と初詣とか行かねーのかよ」

哀れみの目を向けられ、抉られる心。

たまには実家でゆっくりしてたいの！

と、ドヤ顔で言い返せない自分が悲しかった。

両親は気を使ってなのか、仕事の話くらいしか触れて来ないし
年々、こうやって実家に帰りづらくなるのかな、と憂鬱になる。

その時、

知らない携帯番号からの着信。

ひろ？！

何でひろだと思ったんだろう。

もしかして携帯番を号変えたのかもって、慌てて電話に出る。

「もしもしっ」

『もしもーし、A？』

「え？玉森さん？！」

『そうで～す。あれ、がっかりしてる？』

「いえ………」

『がっかりしてんじゃん』

ばかみたい、私。
ひろが私に連絡くれるはずがないのに。

『ミツかと思った？』

「いえ……」

『ごめんね、俺で。
で、A今暇？』

相変わらず唐突な玉森さん。

『暇なら出てきて。初詣行こ』

そして強引。

でも、正直今の自分にはそんな強引さが有難かった。

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「ほんとはクリスマスも誘おうと思ってたんだけど、仕事が忙しくて」

「アクセサリー販売は書き入れ時ですもんね」

「ま、それも今月で終わりだけどね。
来月から音楽一本でやってみるから」

「今年は"KISS"の飛躍の年ですね」

「だといいけど」

玉森さんに連れられて、下町にある、開運と厄除けが有名な小さな神社へとお参りしに行く。

「玉森さんもこういうの拘りあるんですね」

「んー、今年はね」

いつになく真剣に手を合わせる玉森さんの姿に
私も目を瞑ってお願いする。

余計なお世話かもしれないけど、ひろの夢が叶うように

そして、

早くひろとの思い出が風化しますように、と。

「おみくじ引こ。
ここの良く当たるって有名だし」

「え、ちょっと、それは怖いですっ」

と断ったものの、結局強引に引かされてしまう。

「お、中吉。先行きいいかも。
Aは？」

玉森さんに急かされて
恐る恐る開くと、

「………凶です………」

初めて見る禍々しい字にショックを受ける。

やばい、本気で泣きそうかも、私。

そんな私の様子に気付いた玉森さんは、私からおみくじを奪うと近くの木の高い位置に括りつけた。