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なんで。
どうして。
もう、2度とこんなふうに逢うことはないと思ってた。
遠くからそっと応援できたらそれでいいって思ってた。
なのに。
「あれ?俺、タイムスリップした?」
ひろの瞳に私が映ってる。
勿論私の瞳にもひろが。
「ってセクシー魔女じゃねぇから違うか。
つか、なんでまた今日こんなとこにいんの?
友達じゃとはぐれた?
……わけねーよな、さすがに2度も」
「………………違うよ」
「え?」
「違うから!」
やだ、なにムキになってるんだろう。
「わざと……歩いてたの。ここは、その、私にとっては思い出の場所だから。
ちょうど1年前……大切な、大切な出逢いがあった思い出の場所だから、だから歩いてた、の」
私ってば何言ってるんだろう。
「あっ、別に、「玉森は?玉森とは上手くいってんだろ?」
なのに。
そんな私の言葉を無視して裕太とのことを訊いてくるひろ。
「あいつ、前は確かに節操なしだったけど
今はAに本気なのは俺が見ててもすっげ〜分かるから、玉のこと信じてやってくんない?」
「…………」
「A?」
そうだよね。
1年前と同じ場所で運命的に再会したところで
現実はこんなもの。
ひろが1番に守りたいものはちゃんと分かってる。
分かってるからこそ。
しんどい。
そのせいで行き場をなくした自分の本当の気持ちを
ひろの夢の邪魔をしちゃいけないからって必死に殺して、裕太の傍にいることが。
苦しい。
自分が最低なのは分かってる。
でも、どうせ最低なら。
「ひろ、こんなところに私といて誰かに見られたりでもしたら大変だよ、
もうかなり有名人なんだから」
「え?ああ……」
「だから1年前の今日泊まったホテルに先に行ってるね。同じ部屋が空いてたらそこに入ってる」
「は?え?Aっ?!」
ひろの返事も訊かずに走り出す。
来なければ来ないでもいい。
部屋が空いてなければ大人しく家に帰るし
空いてれば独りでそこで1年前の思い出に浸って泣いて帰ればいいだけのことだから。
だけど
後ろを振り返る勇気はなかった────。
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作者名:はちみつみゆ. ましろ | 作成日時:2020年1月9日 18時