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人が一番多く集まっているスクランブル交差点までは少し距離があるものの
ただでさえ人の多い街に更に人が押し寄せているわけだからいつも以上に歩きづらい道。
時折酔っ払いな男の人達にも声をかけられるしで、ついつい人の波を避けながら歩いていたら、
あっ
ここって…………
1年前、美月ちゃんとはぐれて迷い込んだ道。
"KISS"のライブに何度も通う内にこの街にもだいぶ慣れてきて
今ではこの道の先がラブホテル街なのもわかってる。
だから、あんな露出高めな格好をして1人で歩いてれば変な男の人に付けられて当然なわけで。
そしてひろに助けてもらって
そのままホテルに連れて行かれて────
懐かしいな。
銀髪で、黒の革ジャンに、黒のダメージジーンズ、指にはごついシルバーの指輪、左耳には派手じゃないシンプルな金のピアス。
どっからどう見てもチャラそうで、軽そうなのに、綺麗なアーモンドの形の瞳と、鼻にかかった甘く低い声に吸い寄せられるようについて行っちゃって。
声が枯れる程、啼かされて、溶かされて。
またあの日に戻りたいな
なんて思ってたら。
ひろと出逢った場所で、ちょっと感傷的になっちゃったせいで、すぐ近くに人が来ていたことに全く気づかなくて
突然、すぐ背後に人の気配を感じて、恐怖で背中が凍りつく。
え、やだ、
まさか、また変質者?!
今日は普通の格好してるからと思ってすっかり油断してた。
まずいと感じて、慌てて走り出そうとしたら
「A………?」
え…………………………?
空耳?
だって
だって、こんな場所で
1年前とおんなじ場所で
また逢うわけがない。
そんな運命
あるはずない。
逢いたすぎて
勝手にひろの声に変換しちゃったのかな私。
きっとそう。
ずっとひろのことを考えてたから。
そう思い、再び走り出そうとした私の耳と目に、
「A!」
もう一度、
聞きなれた声と
私の腕を腕を掴む見慣れた節張った大きな手が飛び込んできた──────。
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作者名:はちみつみゆ. ましろ | 作成日時:2020年1月9日 18時