17 北山side ページ17
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「お疲れ!」
「お疲れい!」
ダブルアンコールを終えてステージ裏に戻り、ひとしきりメンバーや側にいたスタッフに労いの声をかけながら控え室へと戻る。
すげぇ景色だったな。
今までの3倍近い動員の中、今までとは桁違いに歌いやすかった音響や、照明スタッフによる手の込んだ美しいライティング、
演出すべてが俺たちのライブを盛り上げてくれた
「すっごい盛り上がったな」
「桜井さんっ、本当に有難うございますっ」
控え室に入ってきた桜井さんが、
慌てて椅子から立ち上がって深々とお辞儀をする俺の肩に手を置く。
「今日までには間に合わなかったが、新メンバーを連れてきたよ」
「新メンバー?」
控え室のドアが開き、思わず顔をひそめる俺の前に、
「え……………?」
うそ、だろ。
姿を見せたのは
二階堂と肩を組んだ千賀だった。
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「おまっ、家の、旅館の仕事は?」
「親戚や弟に頼み込んだ」
「はぁ?」
ならなんであの時も、そう言ってバンドに残ってくんなかったんだよ、とか
今更なんだよ、とか
あの後の俺らはめっちゃ大変だったんだからな、とか
言いたいことはいっぱいあったけど、桜井さんに腕を引っ張られて、唇を噛みしめる。
分かってる。
千賀だって1回音楽から離れてみて
気づいたこともあるんだろう。
昔の自分ではどうにもならないと思い込んでたことも、簡単に捨てられた夢も、
大人になった今は、生半可な気持ちじゃ夢は負えない。言い訳は出来ない。
これが夢へのラストチャンスだって分かっているから。
「夢、追いにきたのかよ、また」
「うん」
揺るぎない決意を湛えた瞳が俺を見つめ、頭を下げる。
こんなの、こんなの、上手く行く気しかしねぇじゃん。
俺は涙を見られないよう慌てて後ろを向いた。
「あっ、ミツ泣いてんの?!」
「泣いてねーわ」
「泣いてんじゃん」
「ゴミが入ったの!うるせーんだよ二階堂っ」
「良かったね、千賀。ミツめちゃくちゃ喜んでるっ」
その内、宮田と玉森も控え室に戻ってきて、
慌ただしく千賀の紹介が始まった。
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作者名:はちみつみゆ. ましろ | 作成日時:2020年1月9日 18時