MAD BOY

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ｶﾞﾁｬ



『ただいま』


小さく呟くと

リビングの方からてとてとと音を立ててやってくる人の気配


拓「おかえりなさい」



拓実くんはふたつ年下の恋人


俺が大学卒業したら一緒に住みたい！と懇願していた拓実くんと同棲中



『起きてたの...？』


拓「うん Aちゃん帰ってくるの待ってた」


『ごめんね 遅くなっちゃって』


拓「んーん いいよ」


はいと両手を広げる拓実くん


恥ずかしがり屋の拓実くんのハグしてほしいときのポーズ


その姿がかわいくていつもはちょっと苛めちゃうんだけど今日は素直に拓実くんのところへ



ぎゅっと抱きしめられるとお風呂上がりなのかふわっとせっけんの匂いに包まれる


拓「...くんくん」


わたしの首元に鼻を近づけてくんくんしている拓実くん



『ん...くすぐったいよ...』


拓「Aちゃんこんな匂いの香水持ってたっけ？」


いつもと違う匂いがする


と言う拓実くん



心当たりはあった



景瑚くんだ


あんなに長時間ずっとくっつかれていたら香水の匂いがうつるのも当然



『たぶん後輩の子を介抱してたときに
その子の匂いがうつったのかも』


なんて言い訳みたいなことしか言えなかったけど


拓「そっか！」


と聞き分けのいい拓実くん


そのあとなんかごにょごにょ言ってたけど聞こえなかった



＿＿＿＿




翌週の月曜日



職場に行くと何やら騒がしかった



『何かあったんですか？』


と近くにいた與那城さんに訊ねる



奨「景瑚が



...失踪した」



『......え？』




話を聞くと


先週の金曜日から家に帰っていないらしい


景瑚くんは職場から近いので実家から通っていると聞いたことがある


今朝親御さんから会社の方に連絡があったそうだ


景瑚くんのお家は親御さんが厳しくて
夜遅いだけでも怒られるから無断で外泊なんか絶対無理！
と前に言っていたことを思い出す


景瑚くんに勝手に登録された電話番号にかけてみてもやっぱり繋がらない


わたしからの電話には必ず出てくれる景瑚くんなのに


何か事件に巻き込まれたのだろうか

あんな感じだけどとてもいい子なのに


凄まじい不安感に襲われ
今日は仕事も手につかなかった




お家に帰り拓実くんに景瑚くんのことを話した


『実は職場の後輩がね......』



わたしの話を聞くと拓実くんはひどく驚いた顔をして


拓「それは心配だね」


『うん すごく心配だよ 大切な後輩だし』


拓「無事だといいね




けいごくん」




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