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A｢(この時間の私はきっと3歳くらい？)｣
1993年、この時間のAは大体3歳くらい
この世に産まれてからたったの3年しか時間が経過していない
3歳の頃の記憶なんて大半の人は覚えていないだろう
Aも全くと言っていいほど記憶がなかった
A｢(もし、行き先がミルクディッパーなら)｣
産まれた時から一緒に育ったAと良太郎
気づけばお互いが近くにいて
お互いの存在が当たり前のものへとなっていた
2人が産まれた時から一緒ということは
良太郎の両親とAの両親に何かしらの関係がなければ
今現在に至るまでこのような関係は続かないだろう
とはいってもAにそんなことがわかるはずもなく
Aは自身の両親に関する記憶がないどころか、捨てられたと思い込んでいる
良太郎もAとは若干違うが両親に関する記憶が朧気だ
気になってはいるものの、ほぼ何も知らない状態
A｢(そこにはきっと、良太郎のお父さんとお母さんが)｣
牙王の件で良太郎の過去に飛んだ際に見た
良太郎の両親の姿
良太郎や愛理にどことなく似ていて
幸せそうだったのを今でも鮮明に覚えている
勿論、今まで知らなかった両親のことを知れて
嬉しさを噛み締めていた良太郎と小太郎の姿も。
A｢………いいなぁ｣
自分でも驚くほど小さな声で飛び出した本音
Aはハッとした表情で慌てて口を塞いだ
こんなことは出来れば言いたくなかったのに
割り切っていたはずなのに
A｢(会えるかもしれないんだ、良太郎の両親と)｣
家族との思い出が、家族の顔や声がわかるなんて
なんて羨ましい話なんだろう
そう思ってしまった自分が何だか惨めで仕方なかった
羨ましいというか、どちらかと言えば嫉妬みたいで
いい気持ちにはならない
牙王との件がなければ良太郎だって今のAと同じ状況に立たされていたかもしれないのに
そんな呑気なことを思っていいものなのだろうか
｢ついた、ここだ｣
色んな思いを抱え、色んなことを考えていると
気づいた時にはもう既に目的地へと辿り着いていた
少年の声に反応し落としていた目線を上にあげると
そこにあったものは─
A｢ミルクディッパー……｣
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作者名：ぽちゃた | 作成日時：2022年6月8日 22時
