信仰46 ページ49
「お疲れ」
中原さんと会ってすぐに言われた言葉は労りの言葉だった。
途端なんだか安心して、はい、と返事をする。
「中原さんも、挨拶お疲れ様です」
「いつもの任務に比べたら天と地程の疲労の差だ。お前も大分疲れただろ」
いえ……と返事をして、ストールを巻き直した。
「……××ファミリーと揉めたんだってな」
はっとフラッシュバックする、腰に回された手の気持ち悪い感触。
押し倒された時の重圧感がまだ体に残っている気がして、少し身を捩った。
「すみません……」
「手前が謝ることじゃねーだろ」
でも、と反論しようとすると中原さんに優しく抱き締められた。
温もりがふっと伝わって、直後に中原さんのいい匂いが鼻をくすぐった。
一瞬理解出来なかったけれど理解した途端に私の頭の中は混乱でぐにゃぐにゃになる。
「な、中原さ」
「怖かったな」
息が詰まった。
中原さんはやんわりと私を抱きしめて、ただ頭を撫でてくれた。
怖かったな、と繰り返して。
「無理矢理男に押し倒されたら普通は怖いモンだ。今回の問題は俺が解決してやる。だから何にも心配すんな。何も背負うな。お前は悪くない」
じわ、と涙が浮かんできた。
優しくそんなふうに諭されて、情けなく泣きそうになってしまう。
……本当に中原さんはずるい。
さっきまで怖かったものが全部解けていくような感覚があって、私はみっともなく震えた声で「……はい」と言った。
声が引きつらないようにしたつもりだけど、泣きそうになってるのは多分バレバレ。
1度中原さんは私の体を解放して、そういえば、と問う。
「何でまたストールなんざつけてんだ?」
しかし安心から一転、心臓がどくんと緊張を伝える。
冷や汗のようなものが一瞬で出てくるのだから人間の体は本当に凄い。
……中原さんは首領のようにすぐ引いてはくれないだろう。
どう言い訳をするか……
「い、いえその……
ドレスの時、首元が寒くて。それで姐さんにストールを借りたんですけど……最近寒くなってきたじゃないですか。だからしばらく貸してくれるって……」
「……ふーん。そうか」
……あれ。意外とあっさり騙せた。
中原さんはそのまま振り向いて歩き出したので私もホッと息をつき、それに合わせて付いていく。
しかし刹那、
中原さんは立ち止まって振り返った
そして目にも止まらぬ早さでストールを剥ぎ取り、私の首に咲く華を露わにさせた
945人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
FR3kb7ywsKfcSOL(プロフ) - マジでそれな(^^)b (2020年5月29日 23時) (レス) id: e1643b3add (このIDを非表示/違反報告)
真依(プロフ) - それな( ´-ω-)σ (2018年6月2日 8時) (レス) id: 510e192a85 (このIDを非表示/違反報告)
fuwari - 私は治くんが世界一大好きなのですが...その気持ちものすごくわかります(*'‐'*) (2017年3月9日 23時) (レス) id: f502c3a9d5 (このIDを非表示/違反報告)
かなこ - 無気力感さんとは趣味が合いそうです!! (2017年1月22日 16時) (レス) id: 6ab3ea64fe (このIDを非表示/違反報告)
無気力感(プロフ) - 無名の中二病患者さん» 書いててそれ本当思ってました(´^ω^`)wそこはツッコまないで頂けると嬉しいです(o'3')b シ――――!! コメントありがとうございます(*´∀`*)ww (2016年12月23日 21時) (レス) id: a57f2ac744 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:無気力感 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年11月20日 10時