検索窓
今日:6 hit、昨日:15 hit、合計:186,165 hit

8 ページ23

姉さんの部屋の襖を勢いよくあける。

いつもはなかなか起きない姉さんも、俺の形相に何事かと慌てて飛び起きた。

時透 A
「どっ、どうしたの、ゆう!?」

時透 有一郎
「むっ、むい、むいちろっ、がっ…」

慌てすぎて言葉にできない俺を、姉さんは「お、落ち着いて」といって抱き締めた。

そのとき、ようやく自分が泣いていた事に気づいた。

時透 A
「ゆっくり、ゆっくりでいいよ、ゆう。大丈夫、大丈夫だから」

時透 有一郎
「っ、こ、胡蝶さっ、の、鴉がっ…」

俺と、途中から現れた胡蝶さんの鴉の話をききおえると、姉さんは

時透 A
「…っ」

と、小さく息を飲んだ。

時透 A
「…そっか。…大丈夫、むいのことはしのぶが看てくれるもの。一旦落ち着いて、ね?落ち着いたら一緒に蝶屋敷、いこ。大丈夫、むいなら大丈夫だから、絶対…」

姉さんの鼓動が早く聞こえる。


いつもより確実に早い。

姉さんだってきっと不安なんだ、と思った。

俺を落ち着かせるために、…もしかすると自分に言い聞かせるためにも、こういっているのかも知れない。





それから五日間、俺はずっと蝶屋敷に――無一郎のそばにいた。

運がいいのか悪いのか、胡蝶さんに一週間の絶対安静を命じられている最中なので任務に出ることもなく、片時も離れなかった。

無一郎の任務先にいた鬼は、偶然にも十二鬼月――下弦の弐、だったらしい。

初めは無一郎の方が優勢だったが、山の麓の村にすむ小さな兄妹が現れ、庇いながら戦った末劣勢になり、最終的には毒まで用いられたものの何とか討伐。

しかし、そこで力尽き、銀子が呼びにいった応援が来た瞬間ぶっ倒れた…とのこと。

それを数日前、見舞いに来た隠の人に聞いた俺はとても複雑な心境だった。

主に「兄妹を庇いながら戦った末劣勢に」…のあたり。

それを聞いて、口からついて言葉が出た。

「…お前は本っ当に父さんと母さんにそっくりだな…」と。

いつもこうだ。本当は「頑張ったなぁ」っていってやりたいのに、言えたらいいのに、

うまくいえない。

優しくしてやれない。

いつも、

いつも、

…いつも。

9→←7



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (108 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
191人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

廣岡唯 - 3だあ (11月21日 13時) (レス) @page28 id: 4e6dbece94 (このIDを非表示/違反報告)
廣岡唯 - 面白いwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwキャラほうたい (11月21日 13時) (レス) @page4 id: 4e6dbece94 (このIDを非表示/違反報告)
るるっち(プロフ) - 優衣さん» ありがとうございます!今思えばキャラ崩壊させすぎでは……?と思う描写も多いのですがそれでも今なお楽しんでくれる方がいるというのは本当に嬉しい限りです。コメントありがとうございました! (9月15日 13時) (レス) id: ef030e36e0 (このIDを非表示/違反報告)
優衣 - このお話よくできてますよ👌すごく面白いですこの作品‼️特に無一郎と有一郎の3分クッキングが面白くてすごく笑いました❗無一郎と有一郎のキャラ崩壊がすごく面白いです✨ (8月27日 19時) (レス) @page44 id: fa32b0552b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - まじですか!!!!めっちゃ嬉しいです//////楽しみにまってます** (6月29日 16時) (レス) id: 3716f5de4e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:るるっち | 作者ホームページ:http  
作成日時:2020年6月2日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。